Photo: texasdepository
テキサス州のアボット州知事は2015年に、テキサス大学投資管理会社が保有する約6.5億ドルの金塊が保管されているニューヨークの HSBCの地下金庫から回収すると同時に、アメリカ初の州政府運営の金塊・貴金属保管庫、テキサス版「フォート・ノックス」を設立するための法案に署名した。
それから2年の間、テキサス議会では実現化に向けての法整備、インフラ整備、システム構築の具体案の策定が進められてきた。そうして、テキサス州の金塊・貴金属保管庫、Texas Bullion Depository設立にあたって、その役割、運営と管理の具体案が5月5日に議会で満場一致で可決された。
金塊・貴金属保管庫の設立は、中央銀行の量的緩和などの金融政策によるドルの通貨価値(購買力)の低下で、ドルより金・銀を法定通貨として利用したい強い要望と危機感がテキサス住民と州政府にあったことが背景にある。特に、2008年のサブプライム住宅ローン危機以降、ドル暴落の懸念が安定的で安全な通貨として金銀への動きが活発化した。
金塊・貴金属保管庫を設立することで、金融危機の際には、テキサス州は安全資産である金の保有で深刻な影響を回避することができる。また、州管理下にあるため、国家緊急事態となっても、連邦政府による貴金属の押収はできない州法律で守られている。より重要なことは、これまで法定通貨を独占的に管理している連邦政府、中央銀行から州政府にその権限を移す、革新的な金融勢力のシフトを意味する。
金塊・貴金属保管庫の利用が始まると、個人、法人、政府機関、他国などを含む利用者は銀行の預金の現金と同じように、預けてある金銀を法定通貨として、電子支払決済に利用することができる。日常的な支払いの他に公共料金や税金などの支払い方法として利用できることになる。
保管庫に預けてある貴金属は課税の対象とはならないため、利用者は拡大すると予想される。さらに、小切手やデビッドカードが利用できるようになれば、銀行とほとんど同じ機能をもつ貴金属主体の銀行となる。金塊・貴金属保管庫の設立で、金銀を法定通貨として利用できる環境が整備、不換紙幣と中央銀行を利用しないシステムができあがることになる。
Texas Bullion Depositoryの設立趣旨は以下の簡潔な文章で表現される。
"The Texas Bullion Depository needs to be a physical, secure facility built in Texas, by Texans and for Texans!"
「テキサス金塊保管庫はテキサス人によって、テキサス州民のため、テキサス州に建設され、物理的に安全な施設である必要があります!」