テロの連鎖が英国総選挙に与える影響

04.06.2017

Photo: cnbc

 

 マンチェスター・アリーナの記憶が新しい6月3日午後10時すぎ、週末の賑わいがまたしても惨劇の場になった。ロンドン塔の近くの歩行者天国にミニバンが突っ込み、また複数犯がボロ・マーケットの歩行者を刺した。9名が負傷し48人が病院に運ばれた。テロ実行犯は自爆テロにみせかけた上着を着た3名、この犯行で6名が刺殺された。

 

 犯人は通行人を刺す前にミニバンを暴走させて群衆に突っ込んだ。救急隊によると病院に運び込まれた負傷者は軽傷を負った交通警官を含む48名。英国(ロンドン)では3月にウエストミンスター橋の暴走テロで5名が殺されている。 

総選挙への影響

 英国では6月8日には2020年に当初予定されていた総選挙が実施される。今回のテロは連続して起きたテロ事件にもかかわらず、ロンドンの安全が保証されていないことを如実にあらわす結果となった。この総選挙の動向が注目されるのは、メイ首相が選挙で圧勝すれば、ブレグジットに対する国民の信任を得たことになる点である。

 

 

Credit: bbc

 

 現時点で見れば保守党は定数650の下院で330議席と、過半数を獲得しているものの多数勢力にはほど遠い。これに対する労働党も229議席と大差がないため8日の選挙で、この差がさらに縮まるあるいは保守党が敗北すれば、メイ政権のブレグジットの先行きに黄信号がともる。

 

 G7で対テロ対策を各国首脳に訴えてきたばかりのメイ首相は今回のテロ事件の再発で窮地に立たされている。対テロ政策で国民の訴えが選挙に反映されることは間違いないが、トランプ大統領と対テロ政策の危機意識を共有するメイ首相だが、強めざるを得ない対テロ対策に国民に納得するかどうかが支持率に影響は大きい。

 

 メイ首相の対過激派法案は対象とする「過激派組織」の定義を巡って法的解釈のあいまいさが指摘され、早期可決のめどが断ち切られた。メイ首相がテロリストの解釈を拡大し、あいまいな「過激派」として拡大解釈を目指したからだ。しかし今回のテロを含むテロ連鎖で、法案阻止にまわれば国民の批判を買いかねない。

 

 メイ首相がG7で示した対テロ対策最優先の主張は選挙に有利に働くとみられるが、保守党が有利に議会運営を進められるかどうかは依然として不透明である。