ドイツで広まる感染症の背景に移民問題

Photo: darkroom.baltimoresun

 

 現在、ドイツ全土(ドイツに16ある連邦州のうち移民が最も少ないメクレンブルク-フォアボンメルン州を除いて)では、はしかが流行している。はしかだけでなく、先進国の欧米で撲滅されたと言われてきた感染症が再び発生している。その背景には、衛生や医療水準が低い、予防接種を受けたことがない移民の流入による感染症患者の増大が指摘されている。

 

大流行しているはしか

 今年に入り6月までに、子供だけでなく大人を含め700人が感染、患者数が増加している傾向が報告されている。今回のはしかの流行はルーマニアからの移民たちが感染源とされている。はしかの感染がもっとも高いのはデュッセルドルフを含むノルトライン-ヴェストファーレン州で、500人が感染している。ここはドイツのなかでも、最大の移民を受け入れている場所でもある。その他、移民の多い大都市のベルリン、ケルン、ドレスデン、ハンブルク、ライブツィヒ、ミュンヘン、フランクフルトなどで感染者が報告されている。

 

増加する感染症

 7月12日にドイツ連邦保健省の管轄にある、感染症の発生動向の調査を行っているロベルト・コッホ(注)研究所が発表した報告書によると、2016年にドイツで50種類以上の感染症が検出された。2015年から積極的に中東やアフリカなどからの移民を大量に受け入れてきた結果ともいえる。特に患者数が増加している感染症には、水ぼうそう、コレラ、デング熱、肝炎、細菌性赤痢、ハンセン病、はしか、マラリア、パラチフス、ウイルス性出血熱、風疹、HIV/AIDS、ジフテリア、梅毒、チフス、百日堰、アデノウイルス結膜炎、トキソプラズマ症、やと病、旋毛虫症などが挙げられている。

 

 感染症のなかには、移民流入前のドイツには存在しない数多くの真菌や寄生虫による感染症、熱帯感染症がドイツに持ち込まれたとされる。そのため、症状や感染症を的確に判断できる医師が不足、治療法の知識を持たない医師が多く、治療設備が整っていない状況にあることが、感染症の増加を深刻化している。

 

(注)ロベルト・コッホはドイツの医師・微生物学者で、炭疽菌、結核菌、コレラ菌の発見者である。

 

2016年の感染症増加率(前年度比)

はしか     450%

HIV/AIDS               30%

疥癬      3000%

結核       30%

デング熱     25%

Source: Robert Koch Institute

 

 2015年からアジア、中東、アフリカから200万人がメルケル政権の移民政策でドイツに渡ってきた。2016年には、ドイツに渡った移民のうち約70~80万人が移民申請を出しているが、そのうちの30万人の行方が不明となっている。感染症の侵入を阻止するための検疫、感染症検査が徹底されて行われていない、治療に当たる専門医師や設備が不足、移民の行方が不明となることが多いことが感染症の拡大につながっている。移民の間で広がった感染症は、次第に一般ドイツ住民に広がったことで患者数が増加している。

 

高まるドイツ国民の感染症リスク

 今年1~5月の間、住民591人の小さな町、ビュンスドルフで移民申請が拒否されたイエメン人が強制送還を逃れる目的で町の教会に避難していた。ここで患者が多くの子供や住民と接触、子供50人に強い感染力の結核菌を伝染したことで、移民による感染症のリスクに注目を集めた。

 

関連記事

欧州における移民の感染症問題 

難民の感染症に悩む欧州