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第65回ビルダバーグ会議2017は、6月1-4日まで米バージニア州フェアファックス群、ホワイトハウスから30マイル(約48.3キロ)離れた場所で開催された。今回の議題の中心はトランプ大統領と新政権の政策への対応となった。
開催場所、シャンティリー
会議が開催されているのはフェアファックス群のシャンティリーにあるウェストファールズ・マリオットホテルで、過去2002年、2008年と2012年にも開催されているおなじみの開催場所の一つである。フランスの「シャンティリー」は多くの貴族や上流階級(ロスチャイルド家の別宅がある)の別荘が立つリゾート地であるように、米国のシャンティリーは著名な政治家や高級官僚の定年後の住居地となっている。人口25,000人のフェアファックス(注1)はリベラル派富裕層が集まる全米で3番目に裕福な群で、生計費は全米平均より45%も高い。グローバル・エリートが集まるふさわしい場所ともいえる。
(注1)首都ワシントンD.C.の郊外からダレス国際空港(フェアファックス群)までの間には戦略的重要視されている大規模インフラ開発プロジェクト、ダレス技術回廊(Dulles Technology Corrider)がある。ソフトウェア企業、通信会社、衛星関連企業、航空宇宙関連企業、インターネットサーバーなどが多数集中して、世界の約70%のインターネットトラフィックがここに集まる企業を経由しているといわれている。
主な会議議題
公表された会議議題は以下の通りである。
⒈ トランプ政権:経過報告
⒉ 現大西洋関係:対応とシナリオ
⒊ 現大西洋防衛同盟
⒋ EUの方向性
⒌ グローバリゼーションの鈍化の可能性
⒍ 雇用、所得、期待された実現されていないこと
⒎ 情報戦争
⒏ ポピュリズムが拡大する理由
⒐ 国際秩序におけるロシア
10. 中東
11. 核の拡散
12. 中国
13. 時事
危機感を抱くエリート・グローバリストたち
どの議題をとっても、トランプ大統領の影響は避けられないことから、トランプ政権は「エリート・グローバリスト」たちにとってこれまで推進してきたグローバリゼーション、新世界秩序への方向性を妨害、阻止する脅威となっている。特に、トランプ大統領の自国民・自国重視の政策は、1つの世界統治システムの構築を目指す「エリート・グローバリスト」たちにとって、ビルダバーグなどにより設立された地域貿易協定、経済や防衛共同体の崩壊を招く恐れがある。
グローバル化は一国内部だけでなく、国と国の間でも勝者と敗者を生み出すバランスを求めないシステムである。アメリカはグローバリズムが進むなか、製造業が崩壊するにつれ、世界の敗者となり、中国、インド、ブラジル、インドネシアなどの新興国が勝者となった。国の内部では、製造業関連の雇用がなくなることで、中流階級は崩壊、貧困化が進んだ。その結果、生まれたのが既存体制への不満や不信感、ポピュリズム、ナショナリズム、トランプ政権である。逆に、グローバリズムで最も利益を得ているのはエリート・グローバリストたちである。
参加者の特徴
今回の会議には22カ国から131人が出席している。ビルダバーグ会議の設立に関わり、多大な影響力を行使してきたデビード・ロックフェラー氏が3月に、日米欧三極員会の設立者で米国の外交政策を誘導してきたズビタネフ・ブレジンスキー氏がビルダバーグ会議開催の4日前に死去している。設立当初の参加者の高齢化が目立っていたが、中心人物2人の死去は、今後のビルダバーグ会議にどのように影響するかが注目される。
ビルダバーグ会議の常連である元国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏は主席、トランプ大統領とは5月に主にロシアについて懇談している。トランプ政権からは、マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官、ロス商務長官、クリス・リデルホワイトハウスの戦略的イニシアチブ担当の3人、議会からは、ネオコンのリンジー・グラハムとトム・コットンが参加している。
金融界からは、ラガルドIMF理事の他、ゴールドマン・サックス会長と幹部が最も多く参加している。注目を集めているのが、崔天凱米在中国大使とCERN理事長の参加である。また緊急に会議開催直前に参加を要求されたNATO事務総長のストルテンベルグ氏とスペインのデギンドス経済大臣である。
Part2に続く