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欧州最大のイスラム系移民国であるフランスで、無差別襲撃事件が発生し始めたのが2014年12月に3日連続で起きた3件のイスラム過激派によるテロ事件からである。政府はフランス全土の治安警戒レベルを引き上げ、テロへの警戒を強化したが、2015年1月にはシャルリー・エブド襲撃事件が起きた。それから今日まで、フランス全土でテロ事件が頻繁に発生している。
死傷者39人を出したシャルリー・エブド襲撃事件以来、2 年と4カ月の間に、実に22のイスラム過激派テロ事件が起きている。首都パリに限っては6件起きており、世界の先進国の主要都市では最大のテロ多発都市である。計22のテロ事件の犠牲者は死者238人、負傷者は855人にのぼる。これは、1914年から2014年の100年間、フランスで起きた無差別爆弾事件、暗殺、飛行機のハイジャック事件などで出た死者150人を大幅に上回る。
特に記録に残っている大規模テロは、シャルリー・エブド襲撃事件の他に、2016年11月のパリ市街と郊外で起きたパリ同時多発テロ事件(コンサート会場、サッカースタジアム、レストランでの無差別連続テロ、死者130人、負傷者368人)と2016年7月に起きた南部ニーステロ事件(大型トラックが通行人の中に突入、死者86 人、負傷者434人)で、いずれも実行犯はイスラム国(IS)の戦闘員のジハーディストである。
2015年以降に起きた22のテロ事件は、全てイスラム過激派思考を持つフランスの旧植民地からの移民又はISジハーディストである。大規模テロは3件だが、国民の不安を引き起こしているのがフランス全土で頻繁に起きているテロ事件である。
2015年
3月 フランス、警察、軍とユダヤ人に反感を持ち、3人のフランス兵にナイフで襲いかかる。
4月 女性1人を銃撃、パリ郊外の教会で襲撃する前に逮捕
6月 フランス、サン=カンタン=ファラヴェイでイスラム系フランス国籍の男が勤めていたガス 工場の上司の首を切り(ISの旗を立てる)、工場の爆破を計画して実行前に逮 捕。
7月 ジハーディストと名乗る男性4人(16~23歳)は軍事基地のテロ攻撃を計画して逮捕。
8月 モロッコ移民のイアスラム過激派の男性がパリ・アムステルダム間の高速列車タリスの中で乱射、3人の負傷者がでる。
2016年
1月 ISのジハーディストがパリの警察署を攻撃する前に射殺される。
1月 刃物殺害未遂事件
6月 ISのジハーディストにより警官とその妻が自宅で殺害。
7月 ノルマンディーの教会で人質事件、司祭が殺害される。
7月 刃物殺害事件で負傷者4人
8月 2件の刃物殺害未遂事件
9月 2件の刃物殺害未遂事件
2017年
2月 ルーブル美術館で警備兵4人に襲いかかる
3月 IMF事務所で小包爆発事件
3月 オルリー空港で治安部隊の兵士を攻撃
3月 マルセイユで銃と爆弾の所有とテロ攻撃を計画していた容疑で逮捕
4月 パリ、シャンゼリゼ通りで警官2名を銃撃
フランス国内で非常自体宣言が繰り返し継続されている中で起きるテロ。フランス大統領選挙の決選投票に進む無所属のマクロン氏は、「許されない問題」、「今後も、我々の生活の一部として状況に対応しなければならない」と述べている。一方、国民戦線のルペン氏は「フランスはイスラム過激派との戦争状態にある」、「大量の移民はフランスにとって機会ではなく、悲劇である」と移民政策を見直さなければ、テロは撲滅できないと警告している。 フランスの大統領選挙決選投票への対テロ政策の影響も大きいが、次期大統領が実施する対テロ政策が欧州全体へ及ぼす影響は計り知れない。
フランスの人口当たりテロ件数はイスラム移民人口と相関があり、2007年までに(911以前に)兆候がみられる(下図)。
Credit: benjaminstudebaker