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米国では、2007年頃から鎮痛剤の依存症や過重摂取による中毒死の増加が社会問題となっている。2015年には5万2000人、2016年には過去最高の5万9,000人が死亡している。この依存性の高いオピオイド系鎮痛剤を過剰に処方し、医療保険を利用して診療報酬を不正請求した詐欺容疑で医師、看護師や医療関係者計412人が起訴された。
依存性の高いオピオイド系鎮痛剤が問題視されるようになったのが、アメリカの人口約35%が慢性痛で苦しんでいる言われた1990年代である。その結果、製薬会社は鎮痛剤の大量生産を始め、増産と共に薬がより強いものとなっていき、2002年には、鎮痛剤の約20%がモルヒネより強いものとなった。
危険性の高いオピオイド系鎮痛剤
オピオイドの由来はopium ケシで、ケシの抽出成分を含んでいるため、その強い鎮痛効果と依存性で医療用麻薬として使われてきた。しかし、1990年代に製薬会社はオピオイド系鎮痛剤は安全で、長期服用しても依存性は低いとして、医師や医療関係者に売り込んでいったのである。その結果、害がない鎮痛剤として一般的に広く処方されることが、鎮痛剤の依存症や過重摂取の問題を引き起こしたとされる。
医療機関からオピオイド系鎮痛剤を処方された患者は依存症となり、次第に摂取量が増え、不足すれば麻薬と同じ方法で入手した。麻薬カルテルにとって、需要の高いオピオイド系鎮痛剤はビッグビジネスとなっていった。
都市貧困層で問題であった薬物依存の問題は、郊外や地方へと、白人の中流層に広がっていったのもオピオイド系鎮痛剤が一般的な鎮痛剤として広く処方されるようになったからである。
不正医療で412人が起訴
起訴された412人のうちの医師らは、患者に不要なオピオイド系鎮痛剤の処方、実際に行っていない治療の一環としての使用などと題して大量の処方で、公的医療保険のメディケイド(Medicaid)やメディケア(Medicare)から診療報酬を不正請求していたとされる。不正請求による政府の損失額は13億ドルに上る。
今回、起訴された医療関係者は氷山の一角にすぎない。医療報酬の不正請求のほか、アメリカでオピオイド系鎮痛剤の問題を引き起こした製薬会社にも社会的責任がある。