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現在、イタリアのミラノ裁判所で、ドイツ銀行と野村ホールディングスがモンテ・パスキ・ディ・シエナ銀行と共謀して損失隠し、財務虚偽報告に関与したとする裁判が行われている。検察により押収されたドイツ銀行の内部資料で、ドイツ銀行は当時組織ぐるみで不正行為を行っていたことが明らかとなった。そのため、原告側は裁判所にドイツ銀行を「国際的犯罪組織」として判決を出すことを求めた。
国際的犯罪組織となったドイツ銀行
ドイツ銀行はこれまでも、金銀・貴金属価格、LIBOR金利(ロンドン市場においての銀行間の資金を借り貸しするときの指標金)、外国為替、株価などの不正操作、マネーロンダリング、サブプライム住宅ローン担保証券の販売、デリバティブを利用して顧客の虚偽決算報告の関与など数々の不正行為を行ってきた。
不正行為が発覚するたびに司法当局や民事訴訟を起こされ、和解金、賠償金、罰金を支払ってきた。12月には住宅ローン担保証券の販売をめぐり、米司法省に72億ドル(約8,500億円)を支払うことで決着をつけたばかりである。
今回のケースは、初めてドイツ銀行のような「大きすぎて潰せない銀行」が法定の場で「国際的犯罪組織」と断定さ、判決を受けるかの注目裁判となった。判決によっては、詐欺と横領で起訴されている13人(モンテパスキ元幹部5人、野村ホールディングス元幹部2人、ドイツ銀行の現職と元幹部を含む6人)の刑罰は重くなり、金融犯罪としての最大9年の実刑判決を受ける可能性がある。
聖域でなくなった大きすぎて潰せない銀行
これまで、銀行に不正行為があっても、実刑判決を受ける銀行員のケースは少なく、銀行は制裁金、罰金、賠償金、和解金を支払うといった方法で司法責任は逃れてきた。2015年に、アイスランドで26人の銀行幹部と投資家が市場操作、銀行資金の着服、インサイダー取引、不正ローンの貸などで実刑判決を受けたことが世界的なニュースとなった。これまでの銀行が置かれている特殊な環境も批判にさらされて聖域でなくなっている。
イタリアの法律では、社員個人の犯罪でも、会社側も犯罪の責任が問われる。ドイツ銀行にも重い刑罰が課せられるだけでなく、今回の判決で「国際的犯罪組織」と認識された前例を作ることになる。ドイツ銀行が抱える今後の訴訟問題や他の大手銀行に影響を及ぼすことになる。