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EU離脱で英国経済は減速し、長期低迷するとの経済見通しが多かった。しかしEU離脱宣言後に予想された大きな減速は見られず、3月には2017年の英国の経済成長率は2.0%に上方修正された。
オックスフォード・エコノミクスの経済予想
このほど、独自の計量経済モデルを使って、経済、企業、産業、市場などの分析と将来予測で知られるオックスフォード・エコノミクス(注1)は今後の英国経済の成長は他のEU諸国を上回るとの予測を発表した。
(注1)英オックスフォード大学のビジネスカレッジ(グリーン・テンプルトンカレッジ)との合弁事業で設立されたシンクタンク。200人のエコノミスト、業界専門家やアナリストで構成されている。
EU脱退後の意外な経済成長
発表された報告書によると、EUの離脱交渉の間とその後の2017~2021年の間に、英国の経済成長率は1.8%の成長を続け、欧州の中では最も高い成長率となると予測した。対照的にEU経済を牽引しているドイツ経済は移民対策の負担が今後財政・経済への影響が懸念され1.3%、フランスは1.4%、イタリアは1.1%に留まるとみている。
さらに、英国の地方自治体への地方分権が進めば、英国はEU離脱の影響を最小限にでき、5年後には2.7%の経済成長率を達成できるとしている。EU加盟で穏健を受けてきた大都市とは対照的に、地方は疲弊が広がった。大都市と地方との格差は深刻なレベルまで達したことが、地方住民の圧倒的なEU離脱支持理由となった。一方、このことを裏付けるかのようにEU残留の支持が最も高かったのはロンドン中心であった。
実証された国民の正しい判断
英国地方自治体ネットワークに加盟している自治体は英国の製造業の生産の50%と輸出の40%を占める。地方の製造業の生産性を高め、インフラ投資、成長産業の地方への再配置などを行うことで、地方経済の立て直し、輸出産業の競争力の向上が達成できるとしている。
EU脱退の是非を問う国民投票で国民が脱退を選んだのはEU脱退のデメリットと脱退によるメリットを天秤にかけた結果だが、実際に脱退前の予想と異なり経済が上向きになったことが判断が正しかったことを証明した形となった。
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