EV化で電力不足が深刻に~2040年までに原発10基分

5.08.2017

Photo: middleeast

 

2040年を目処にした内燃機関(ICE)の禁止などEVの転換の現実性が高まりつある中で、ようやく本格的な普及が社会に与える影響が真剣に議論されるようになってきた。これまでの議論は車としての性能・至便性・価格にとどまっていたが、ここにきてEVへの転換で必要となる電力供給とその環境負荷が議論の中心になってきた。

 

もっとも厳しいICE規制は英国の2040年ガソリンとデイーゼル燃料販売禁止である。このことがEV普及の動きに拍車をかけていることは事実だが、その先には未解決のエネルギー不足の悪化が避けられない。これまで話題に上ることはなかった。しかしEVのICEを置き換えは電力網にとって想像を超える規模の負荷となる。

 

EV化へのシフトを加速する背景は国により様々であるが、英国の場合にはGDP1%に匹敵する健康被害がある。この問題は世界中で加速する都市化を鈍化することにもなりかねない。英国の環境相マイケル・ゴブ氏は健康被害の廃絶のためにICE廃絶以外の道はないとする一方で、現在の発電能力のままは電力不足となるとしている。

 

EV化で電力不足

電力不足は世界的な傾向でフランスが原子力発電で湯優雅あっったのは過去の話で、2025年までに保有原子炉の1/3が停止する。英国の場合、ピーク電力61GWに対してEV化で50%に当たる30GWの電力が不足するとされる。

 

 30GWといえば建設が遅れているヒンクリーポイントCの原発施設の10倍の規模である。英国は使用電力の10%を輸入に頼るが、新たな発電所が建設できなければ1/3となり安全保証上の問題となる。

 

 英国は17都市の81の道路がEUの排出基準を満足してないとして、これらを対象にICE車の法的規制とルート変更を急ぐことになった。さらに2020年までにデイーゼル車の排出ガス規制でNOxによる健康被害対策を徹底する。しかし英国の現在のEV販売数は4%止まりで、販売台数が増えなければインフラの普及が伸びない。

 

 燃費の安いデイーゼル車廃止への政府の施策は効果的な戦略とはいえない。また政府が環境汚染税などの規制をデイーゼル車だけに向けることの不公正さも指摘されている。労働党政権がCO2排出量の少ないデーゼル車を勧めたため、2,000年のデイーゼル車登録台数320万台から現在では1,000万台に増えた。

 

EV化の背景にある再生可能エネルギー

 新規原発が住民反対とコスト高騰で進まない英国は原発以外のエネルギーミックスとして北海の風力発電に期待をかける。風力発電のみでの30GW発電には、新たに風力発電タービン10,000基の建設が必要になるが、それでも風力発電の建設コスト(100-300万ポンド)は原発10基(~9.6基)の建設コスト(200億ポンド)の6.5%、建設期間は1/40となる。したがって新規原発建設(注1)で不足電力を補うのは可能性が低い。そうなると結局EV化が再生可能エネルギーへの転換を早めることになる。EV化への背景には再生可能エネルギーへの転換があったといえなくもないだろう。

 

(注1)原発推進派はEV化を原子炉建設(日本の場合は再稼働)の好機と見るが、安全保障や核燃料廃棄、核燃料採掘・輸送・製造過程のCO2排気を含めれば、コストと建設期間を度外視しても選択肢とはならない。

 

関連記事

英国が2040年からデイーゼルとガソリンの販売を禁止

EVだけに未来を託せない理由