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7月12日に米下院金融サービス委員会で、米FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長は、バランスシートの縮小を年内に実施する予定があることを明らかにした。25~26日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)で、2015年12月の政策金利の利上げ開始以降の5度目の引き上げとバランスシートの縮小の実施時期を発表するかが注目される。
年内開始であれば、9月か12月となるが、果たしてバランスシートの正常化に踏み切ることになるのだろうか。
バランスシートの縮小
FRBは6月に、バランスシートの縮小に関しての具体的な方法を発表している。現在約4.5兆ドルであるバランスシートを2008年のサブプライム住宅ローン危機前の1兆ドルまで縮小する計画である。債券市場への影響を最小限にするため、保有債券は売却せず、満期償還された債券の再投資を停止する方法でバランスシートの正常化を目指す予定である。
バランスシートの縮小が開始されると、まず月間100億ドル(国債60億ドルと住宅ローン担保証券40億ドル)の再投資が停止される。3カ月毎に国債60億ドル、住宅ローン担保証券40億ドルずつ引き上げられ、12カ月かけて月間500億ドル(国債の上限300億ドルと住宅ローン担保証券の上限200億ドル)になるまで拡大を続ける。その後は、月間500億ドルでバランスシートが1兆ドルに縮小するまで続けられる。
しかし月間100億ドル、年間1,200億ドルでバランスシートの縮小を続けたとした場合、29年かかる。最大の月間500億ドル、年間6000億ドルのペースでも5.8年かかることになる。縮小プログラムを停止、中断、変更がない限り、FRBの段階的な縮小プログラムでは、バランスシートの正常化を達成するには約10年という長い時間がかかることになる。
バランスシート正常化プログラムには、開始してから景気後退や景気減少が起きた場合、政策変更の実施が必要となった場合の対策が示されていない。市場への影響を懸念する以上に、この先10年間、経済の悪化や情勢に変化がないと想定するのは現実的ではないと考えられる。FRBバランスシートの正常化は実現性に疑問符がつく。
Credit: FRB