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米JPモルガン・チェースは、顧客向け非公開の最新レポートで、12月以降起きると想定される預金流出に備え、全米の中小銀行の合併を推進することを明らかにした。連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和政策で膨らんだバランスシートを12月から縮小を始めるため、その影響で特に中小銀行の経営環境が悪化するとみられる。
2009~2014年の金融緩和下で、 FRBに投資家住宅ローン担保証券や米国債を売った投資家が売却代金を小売銀行や商業銀行に預金として預けた。その結果、モルガン銀行の試算では、銀行預金が2兆5000億ドル増えたとされる。今後4~5年の間に、約60%に相当する1兆5000億ドルの預金が銀行から引き上げられると予想される。
特に預金流出の深刻な影響を受けるとされているのが、資産500億ドル(約5兆6800億円)以下の全米の中小銀行である。預金を主な資金源として、企業や個人等への貸出、債券や株式といった有価証券への投資などにより、資金運用を行なっている銀行にとって預金流出は経営問題となる。収益力は低下、銀行運営が困難となる可能性が高い。大手銀行と比べ、中小銀行はこれまでのような預金を増やすことが難しい環境に置かれており、既に地方の中小銀行の倒産や合併が始まっている。
金融緩和で増えた銀行預金の2兆5000億ドルの残り40%に相当する1兆ドルで大手銀行は高額資産を保有する顧客への融資や大規模な投資で収益率の高い資金運営を行ってきた。
FRBは満期を迎えた約4兆5000億ドル相当の証券の償還金を再投資しない方法で、バランスシートを縮小する予定である。FRBの金融緩和政策の副次的影響ともいえる預金流出問題。今後中小銀行の倒産や生き残りを賭けての合併、買収が増えていくとみられる。