カタロニア独立を阻止するスペイン政府

21.09.2017

Photo: mantlethought

 

 スペイン政府は10月1日に実施予定のカタロニアの分離独立を問う住民投票を憲法違反として認めていない。住民投票の実施を阻止する目的で、20日スペイン警察はカタロニア州政府各省庁の家宅捜査を強行、14人の政府官僚を逮捕し、カタロニア州に非常事態宣言を発動した。

 

 スペイン政府の強固な反対で住民投票が実施されるかが不透明となっている。カタロニアは独自の言語、1000年以上もスペインとは異なる歴史と習慣と文化を持つ特殊な地域である。スペイン人口の16%を占める750万人のカタロニア自治州はスペインの中では最も裕福な地域で、スペインGDPの19%を占めている。

 

 スペイン内戦を収め、スペイン統一を果たした初代スペイン共和国ファランシスコ・フランコ首相の死(1975年)以降、使用禁止されていたカタロニア語が再び公用語として認められ、カタロニア・ナシュリズムが復活し、スペイン政府からの自治権の拡大を求めてきた。

 

 2006年には、スペインとカタロニア州両議会は予算を含める自治権の拡大の合意に達したが、2010年には、スペイン憲法裁判所は自治権の拡大は憲法違反とする判決を下した。これに反発するカタロニア政府と住民による分裂独立を求める運動が活発化した。

 

 2014年には非公式の住民投票が実施、投票率は37%に止まったが賛成投票は80%を超えた。2015年には、カタロニア州議会選挙で独立支持党の連合が過半数を獲得、今年9月には、カタロニア州議会でスペイン共和国からの「独立手続きの開始」の宣言をし、これを受けて10月1日の住民投票で独立賛成が勝利すれば、直ちにスペインからの正式な独立手続きをとる事になっていた。

 

Credit: economist.com

 

 地方の独立を問う住民投票は、スペイン憲法裁判所が違憲との判決を出していることから、スペイン政府は強行に家宅捜査と住民投票に関わる政府官僚の逮捕を実施した。全ての投票紙は回収、カタロニア州の全700市長が事情聴取を受けた後、違法な住民投票を実施しようとした罪で起訴される可能性がある。

 

 今後、スペイン政府に対する住民による反対デモが深刻化していく可能性がある。1931年にスペイン共和国となる前に過去4回カタロニア共和国として成立、今回5度目となるのかが注目される。

 

関連記事

カタロニアの独立を求める州民投票

カタロニア独立で加速する国家の再編成

パロマレスの呪いとカタロニア独立

 

 

©Copyright 2014 Trendswatcher Project All rights reserved.
このホームページの内容の著作権は、Trendswatcherプロジェクトに帰属します。無断での複製、引用または転載等を禁じます。