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サウジアラビアはイランとの国交断絶の条件が中心となる最終宣告をカタールに突きつけた。背景にあるのは、中東でサウジアラビアと米国の脅威となっているイランの政治的・経済的影響力の拡大を阻止する動きである。しかしカタールとイランの関係は切り離せない共存関係である。
共同権益をもつ世界最大級のガス田
イランとカタールは世界最大の埋蔵量のガス田である南ポースノース/ノース・フィールドの権益をもっている。カタール半島沖合のアラビア湾にある世界第2位のガス田ノース・フィールドは、北部のイラン領の世界第3位の南パルスガス田と海底で繋がっている。そのため、カタールとイランは連携してガス田の開発とその運営を共同で行ってきた。
カタールは外国投資を積極に取り入れた結果、ここ25年間で、世界最大の液体天然ガス(LNG)輸出国となった。イランはその反対に、核開発問題で国際的な経済制裁を受けたことで、南パルスガス田の開発は遅れをとった。
2005年にカタールは、急速な開発が埋蔵量に与える影響を調査する目的で開発を中止していたが、LNG市場での生産者間の競争の激化で開発を12年ぶりに再開した。現在LNG基地は30個所あるが、さらに6基地を建設中である。
中東で中国元決済
カタールの「東を見よ(Look East)」政策で、中国とカタールは戦略的パートナーシップを結んだ。人民元通貨スワップ協定を締結の他に、中国4大国有銀行の一つである中国工商銀行のドーハ支店で中東初の天然ガスと原油の人民元決済業務を行っている。
湾岸諸国のなかで、最も早く中国の「一帯一路」構想を支持、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加入したカタールは、中東での人民元決済の金融ハブ(注1)を目指している。中東原油の最大の需要国である中国はドルではなく人民元での決済体制の構築に動いてきた。これまで、全ての原油をドル建て決済とするペトロダラー一体制を維持してきた米国とサウジアラビアに取ってカタールは脅威であり、ペトロダラー体制が終焉に向かっているなかで、最終抵抗手段ともいえる。
(注1)KAECとはKing Abdullah Economic Cityの略。中東の中心に位置する金融街を目指す。KAECはサウジアラビアのアブドラ国王が自分の名前をつけて紅海に面したサウジアラビアの新都市。カタールの金融ハブ、ドーハと真っ向から競合する。
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