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デイーゼル車の排ガスによる健康被害が無視できないことが認識されるようになり、VW以外の大手メーカー(ダイムラー・ベンツ、BMW)に波及したデイーゼルゲート問題、大手3社のカルテル疑惑と不祥事が続いた。このためデイーゼル車の将来の廃止へ向けて、7月3日にドイツの大手自動車メーカーの幹部は政府関係者とデイーゼルエンジンの将来について話し合う。
後がないデイーゼル車メーカー
ドイツ、フランスが2030-2040年までにデイーゼル車の販売禁止を決め、欧州の地方都市も独自に規制し始めた。一方、デイーゼル車廃止で800,000人の雇用が失われる。雇用問題を重視するメルケル政権は規制に寛容な態度を示したため人気も落ち込んでいる。
このため自動車メーカーだけの問題ではなく、危機感を持った政府とメーカーが同席して協議する必要が生じた。シュツットガルトの地方裁判所は健康被害の防止にはデイーゼル車の一部禁止措置の必要性を認めた判断を示している。またECもドイツに大気汚染の基準を守るよう警告しており、グリーンピースの調べでは57%の国民が法規制に賛成している。
しかし各メーカーともデイーゼル車排ガス対策に巨額の開発資金を投じており、ガソリンエンジン車よりCO2排出の少ないデイーゼル車の優位性を主張することもあって、メルケル政権は禁止、廃止という極端な措置に踏み切れていないしかし問題となるのはCO2でなくデイーゼル車の排出するNOxによる呼吸障害や心臓疾患などの健康被害である。
このためドイツ大手自動車メーカーはEVに舵を切りつつある。VWは2025年までに最大のEVメーカーとなる計画を立て、他のメーカーも欧州全域に充電インフラを整備する計画に参加している。政府内でもECUソフトを改良(注1)することで済ませたいとする意見と規制強化の意見が対立している。前環境大臣(緑の党)は自動車産業と政府の癒着構造を「政治・産業カルテル」として非難し政府の責任を追求している。
(注1)ドイツ自動車メーカーは国内の500万台のデイーゼル車のECUソフトのアップデートを行う。これにより燃費を犠牲にして排出ガスが25-30%低くなる。
健康被害を無視するような大手メーカーの不正は脱デイーゼル車社会への動きを加速することになった。デイーゼル車の終焉が間近に迫っていることは間違いない。政治と産業界が国民の信頼を取り返すことができるかが問われる。規制がECUソフト改良だけで骨抜きになるのであれば、メーカーと政府の「カルテル」が疑われても仕方がない。
Updated 04.08.2017
水曜の会合の結果は自動車メーカー側がECUソフトウエアのアップデートを国内の500万台に実施する、ことで決着した。メーカー側の意向が認められた形になり政府と大手メーカーの癒着の度合いが大きいことがわかる。禁止になる2040年までには20年以上あるので、それまではデイーゼル車を売りまくり、落ち込みはEVで補おうとする思惑が見え隠れする。メーカーと政府の「カルテル」を裏付けるものとなった。