ドイツ自動車メーカーにカルテル疑惑

24.07.2017

Photo: binghamtonhomepage

 

独スピーゲル紙は過去20年にわたりドイツの自動車メーカーがカルテルを結んで排ガス規制の不正(デイーゼルゲート)を行ってきたとする衝撃的な事実を明らかにした。

 

スピーゲル紙によれば3大メーカーであるダイムラー・ベンツ、BMW、VWは3社が秘密の「作業部会」を通じて、生産コスト、部品供給会社、販売戦略などの(本来は秘密であるべき)重要な企業情報を共有していた。特に問題となるのは後にデイーゼルゲートに発展する排気ガス浄化に関する技術情報が共有されていたことである。

 

同紙はこの秘密協定がドイツ経済史上最大のカルテル疑惑に当たるとしている。秘密の作業部会で3社がデイーゼル車の排ガス浄化基準を申し合わせて、自主規制していた。その結果、規制値を上回る排気ガスのNOx濃度をVWと同じ不正装置(ECUソフト)で基準値を試験時のみクリアしていた。

 

VWに端を発するソフトウエアによる不正装置がダイムラー・ベンツ車にも使われ、同様の手口で不正が行われたとして、同社は300万台にも及ぶ過去に欧州と米国で販売したデイーゼル車をリコールすることになった。

 

秘密作業部会はデイーゼルゲートだけでなく生産コストを下げる目的で、部品供給業企業の契約調整を行うなど、本来競争関係にあるはずの主要メーカーが情報共有によりコスト削減と競争回避を行なっていたことになる。作業部会は自動車組み立て、ガソリンとデイーゼルエンジン、ブレーキ、変速機など主要60分野に及び200名の従業員が参加していた。

 

カルテル疑惑はスピーゲル紙の他にもロイター、ブルームスバーグなど多くのメデイアが取り上げている。ブルームスバーグによるとダイムラー・ベンツ独自のNOx除去薬剤アドブルー(AdBlue)(注1)のタンク容量までもが3社で了解済みであったという。

 

(注1)ディーゼル車に取り付けられた触媒内部にて排出ガスに対して噴霧される尿素水溶液。NOxを窒素と水に分解する。

 

デイーゼルゲートからカルテル疑惑へと波及したドイツ自動車メーカー3社にはアウトバーンにおける速度上限規制(250km)の紳士協定どころか重要な企業情報を共有することで、欧州と米国でのドイツ社販売を盤石なものとしたことが明るみに出たことで、デイーゼルゲートを上回るカルテル違反罰金が科せられる。

 

アウデイとメルセデス・ベンツは今週、販売したデイーゼル車の大量リコールを発表したばかりであった。ドイツ政府当局はVWのデイーゼルゲート調査のため本社を捜索した時に、カルテル疑惑に気づいたが、その数週間後逃げきれないと判断したVW、ダイムラー・ベンツは独禁法調査当局の捜査協力に合意したが1,000億円を超える独禁法違反の罰金による損失リスクで株価が下がった。

 

ドイツの3大メーカーはデイーゼルゲートとカルテルで大きな痛手を受けることになるが、自由競争を「合理的に」回避したことの代償は大きい。