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破綻危機が騒がれていたスペインの銀行バンコ・ポピュラールに対し、欧州中央銀行(ECB)は「ベイルイン」制度の活用とスペイン最大の銀行サンタンデールへの売却による救済を採択した。公的資金や破綻処理基金の資金を投入せず、バンコ・ポピュラールの株主と債権者が損失を負うことになった。
バンコ・ポピュラールは1926年に設立、2007以前には一時世界で最も収益率の高い銀行であった。スペイン第6位の銀行は最も多くの中小企業の他、ローマ・カトリック教会の組織の一つで、スペインでは多大な影響力を持つオプス・デイ(注1)が顧客である。
(注1)ローマ・カトリック教会の組織(属人区)、オプス・デイとはラテン語の「神の業」を意味し、世俗社会で職業生活を通して自己の宗教的な完成を目指す人々の住むいわば「特区」。
バンコ・ポピュラールの破綻危機
バンコ・ポピュラールは不動産ローンの不良債権処理が進まず、2016年には370億ユーロの不良債権を抱え、3億6000万ユーロの損失をだした。資金繰りに行き詰まった同行の流動性は大幅に悪化、破綻が確実とされた。その結果、欧州連合の単一破綻処理委員会(SRB)が2016年から導入した「ベイルイン」救済の枠組みで破綻を回避されることになった。
ベイルインで繰り返し資本増資に応じてきたバンコ・ポピュラールの株主と偶発的転換社債( CoCo債のAT1債とAT2債)の保有者は投資全額を失うことになる。その損失額は約20億ユーロに登る。今回はシニア債の保有者及び預金者はベイルインの対象とはならなった。
バンコ・ポピュラールの買取に関しては、単一破綻処理委員会はサンタンデールに1ユーロで売却した。今後、サンタンデールは不良債権処理に79億ユーロを投入する予定である。
スペインに続くイタリアの銀行のベイルイン
バンコ・ポピュラールのようにイタリアでも多額な不良債権を抱える多くの小中規模の銀行が存在、スペインより深刻な状況にある。最新調査では、イタリアの商業銀行500行のうち114の銀行はテキサス・レシオ(注2)100%を超えており、より深刻で破綻危機を示す200%を超える銀行が何と24行もある。
(注2)テキサス・レシオは銀行の健全性を示す指標の一つである。銀行の不良債権残高における有形自己資本と損失割り当て準備金の割合を示す。失う可能性の高い資産(不良債権)に対して、どれだけの資金を準備することができるかを示し、銀行の不健全性を指数化したものである。
ECBはバンコ・ポピュラールと同様にイタリアの破綻危機にある銀行にベイルインを適用すれば、社会混乱や他の欧州銀行への連鎖的な影響を及ぼす可能性が高い。それは、イタリアでは多くのの年金受給者が株主や劣後債の保有者であることに加え、多くの欧州銀行がイタリアの銀行の株主、社債を保有しているからである。
バンコ・ポピュラールのベイルインは、今後EU加盟国の銀行救済にはベイルインが適用されることの警告となった。