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現在、世界には830以上の仮想通貨が存在していると考えられている。消えていくものがある一方、新しい仮想通貨が続々と発行されている。日本にもモナーコインと呼ぶコインがある。仮想通貨の市場規模は時価総額(注1)で、500億ドルを突破、投資資産や決済手段としての利用は拡大傾向にある。特に、日本政府が4月1日から、ビットコインを「貨幣」とし、公的な決済手段と認めてから一段と価格が急騰している。仮想通貨のバブルともいえる価格の高騰の背景には何があるのだろうか。
(注1)時価総額は通貨の価値と出回っている通貨の量の積
仮想通貨ランキング
世界で最も利用されている仮想通貨のトップ3はビットコイン、イーサリアムとリップルである。830以上の仮想通貨が存在するが、その多くは比較的時価総額の小さいコインである。
最も利用されているビットコインは、仮想通貨全体の時価総額の60%を占めている。現在、ビットコイン価格は$1,720(5/16/2017時点, WorldCoinIndex)で、金価格より28.2%高い。決済手段としての利用が広がり、2年前と比べ価格は640%上昇している。欧州に続き、日本では公式に「貨幣」と認定、7月にはオーストラリアでも法定通貨になる予定である。
時価総額第3位はシリコンバレーのOpenCoin が開発、Googleやシリコンバレーの有名ベンチャーキャピタルが出資しているリップル(Ripple)である。その人気は高く、2017年2月には前年度比で3,540%も価格が上昇、今後の成長が注目されている。現在、リップルの価格は0.25ドルではあるが、時価総額は73億ドルで、市場の14.6%まで占めるようになった。 リップルの人気と急速な普及は、リップルでドル、ユーロ、円、さらにビットコインで金銭を送受できる、ビットコインにない特徴にある。
仮想通貨の今後の普及と共に仮想通貨全体の時価総額が拡大する傾向にある。しかし、急速な価格の高騰で仮想通貨バブルが懸念されている一方で、不換紙幣への信用喪失が始まって、仮想通貨への信用が高まっている懸念もある。
警戒する中央銀行の思惑
ドイツ連邦銀行の理事の一人、Carl Lidwig Thiele氏は、ドイツWelt am Sonntag紙で仮想通貨の購入について次のコメントを出している、「ビットコインは中央銀行が発行しているものではない。匿名の関係者たちの間での取引手段で、貨幣と認識していない。ユーロ、ドル、円などと同じように安全だと思うのであれば、その責任は個人にある。購買力を保つためにビットコインを使わないように」と警告している。
このコメントは、バブルを懸念しているのか、それとも中央銀行が恐れる不換紙幣への不信感が高まっていくことを脅威としているのかは、明白ではない。言えることは、中央銀行が仮想通貨を注目し始めたことである。中央銀行の理事がこのような発言するのは異例である。不換紙幣(fiat money)(注2)の信用を失うことを恐れているのかもしれない。
(注2)本位貨幣(正貨たる金貨や銀貨)との 兌換が保障されていない法定紙幣。