Photo: indianexpress
スペイン北東部バルセロナとカンブリスの連続テロ事件で、欧州各国から訪れていた観光客は恐怖と混乱の週末を過ごした。バルセロナの暴走車テロの容疑者は逃走していたが、21日に地元警察は近郊のスビラッツで偽の爆発物ベルトの男を射殺した。AFPによれば射殺されたのはバルセロナでのテロで車を運転していた実行犯ユネス・アブヤクブ容疑者であった。
相次ぐスペインのテロには現場となった地域と犯人の身元に特徴がある。今回のテロではモロッコ人の実行犯が、イスラム教宗教指導者の影響を受け過激な犯行に及んだと見られる。スペインでは北アフリカに面する南部沿岸一帯が当局によって「危険地帯」とみなされていた。
マドリード以南に集中するテロ
相次ぐ欧州のテロがフランス、ドイツなど広域に渡っているがスペインの大規模テロ事件としては2004年に中央部に位置するマドリードで起きた列車爆破事件がある。この時にはモロッコ人3名を含む犯行グループの列車爆破で191名が犠牲となり2,000人以上の負傷者を出す惨事となった。
スペインは続く2015年6月に地中海に面したリゾート海岸コスタ・デル・ソルでチュニジア人の犯行で英国人30名が殺されてから厳戒態勢にあった。2015年以降、コスタ・デル・ソルを含みISによるテロ事件は南スペインで発生した。下図に示すようにスペインのテロ危険地域は北アフリカ海岸に面した地域に限定されている。英国だけで年間スペインを訪れる観光客は1,200万人に及ぶため、当局が厳重警戒態勢にあった中での今回のテロであった。
Credit: Getty/Daily Star
テロ温床となるモスク
スペインのテロはバスク分離主義者ETA時代が有名だが、最近の傾向はマドリードを例外として南部の海岸沿いに移行しており、今回のバルセロナやカンブリスも例外ではない。なぜ南部に限られるかといえば北アフリカからのイスラム系移民が多く、温床となるモスクも多いからである。
パリ同時多発事件を受けて、非常事態宣言が発令されてから、フランス警察当局は、イスラム過激派的思想(サラフィー・ジハード主義)を広めている疑いやイスラム国との関連のある人物、組織の調査を行ってきた。一方、モスクは米国のジハード・ネットワークを支える過激派的思想を広めている疑いがある。
歴史的にスペインが8世紀に北アフリカから侵入しイベリア半島の大部分がイスラム支配下に置かれ8世紀に渡ってイスラム世界に属していたが、資金の傾向はむしろ北アフリカからの移民の増大によるところが大きい。スペインは1990年代後半から10年間、「第2の移民時代」と呼ばれる時代の移民が労働人口を支えGDP4%と好調な経済となった。北アフリカからの移民数は総数の第3位であるが、南部地域に限れば人口密度ははるかに高い。移民政策の代償は身近な存在で表面化する。
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