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米国議会は、5日までの1週間分の暫定補正予算が切れる前に、5月6日から9月30日までの2017年度(注1)補正予算案をまとめ、政府機関の一部が閉鎖する事態を回避した。早くて3日に1兆ドルの補正予算案が可決される見通しである。
(注1)米国の会計年度は毎年10月1日から始まって、翌年の9月末に終了する。2017年3月16日にトランプ大統領が公表した予算調書(大統領要求予算)は10月から始まる2018年度予算案。2017年度予算は3月15日に債務上限に達した(使い切った)。
補正予算案の成立や債務上限の引き上げを巡り、政府機関の一部が閉鎖される事態を直前に回避する騒動は1976年以来、ほとんど毎年起きている。過去41年間で政府機関が閉鎖に追い込まれた事態は18回あった。閉鎖期間は短くて1日程度だが、長い場合には 21日続いたこともあった。政府機関の一部が閉鎖しても、市場や国民への影響はほとんどなく、予算成立の騒動は議会における与野党の間での予算を巡る駆け引きに使われているともいえる。予算案の早急な成立を目指す与党にとっては妥協は避けられないため、野党は有利な立場に立つ。
トランプ政策に予算は付かず
今回の予算案は、これまでと異なって、何が含まれているかより、何が含まれていないかが重要なポイントとなる。トランプ大統領が求めているメキシコとの国境沿いの壁の建築費、家族計画連盟への補助金の停止、不法移民の逮捕や強制送還費、聖域都市への補助金の停止など重要な政策に関わる予算案が盛り込まれていない。トランプ政権が要求していた予算案は国防費と国境警備費の増加以外は、補正予算においては完全に骨抜き状態となった。
総額約1兆ドルの補正予算の中で国防費は前年度より199億ドル多い5,930億ドル、予算全体の約59%を占めている。それでもトランプ大統領が要求した額(6,390億ドル)を下回ることになった。国防費の87%は防衛基本予算であるが、13%は「緊急戦争予算」の項目で割り振られている。国防費の増加で、トランプ大統領が目指す、米軍の再構築に向けての予算案となった。
9月に再燃する2018年度予算と債務上限引き上げ問題
9月30日には2017年度予算が終了を迎えるため、トランプ政権は2018年度予算案成立と債務上限枠の引き上げ問題に直面する。毎回問題となるのが、上院で予算案が可決するには、賛成票が60票以上必要となる予算案の成立プロセス。現在上院議員計100人のうち、共和党は52人、民主党は46人で、賛成60票の成立プロセスではどうしても野党の賛成票が必要となる。
またトランプ政権の場合は、共和党内での基盤が弱いため、予算案を可決するのが難しく、これが政策実現の障害となっている。現に、2017年度補正予算案は共和党が大幅に妥協し民主党中心の政策予算案となった。予算案成立の制度を改革(現在の賛成60票から 51票に下げる)するか、共和党の議員議席数を大幅に増さない限り、トランプ政策を実行するのは難しい立場に置かれている。