Photo: thedailybeast
7月7~8日にドイツ、ハンブルグで開催されたG-20で警官2万人が抗議デモ隊の警備にあたった。「地獄にようこそ」と銘打ったデモには、ヨーロッパ中からプロの極左集団、無政府主義者、反グローバリズム、反資本主義、反ファシズムなどを提唱する活動団体や環境保護団体が参加した。暴徒化した抗議デモは3日間続いた結果、警察官476人が負傷、186人が逮捕、225人が拘束された。
暴徒化したデモ隊の車両の放火、店舗や事務所の損壊、店舗の略奪、警官の負傷といったギリシャやベネズエラで見られた光景となった。警察に向けて石や発煙筒を投げつけるデモ隊に対して、警察は放水銃、催涙ガスなどで対応した。G-20の主催国として、 EUの牽引的存在としてのドイツのイメージは崩れ、ドイツで拡大を続けている極左勢力への対策をとってこなかった政府への批判が高まっている。
ブラック・ブロックとは
国際会議などの抗議デモに現れ、デモの暴徒化、警察との暴力的衝突、店舗への破壊攻撃を行うのがブラック・ブロックと呼ばれる集団活動形態である。ブラック・ブロックは、1960年代にイタリアの労働者主義共産主義から生まれたオートノミズム思想が源流となっており、1980年代ドイツでの反核兵器・平和運動や反体制運動が今のブラック・ブロックの原型となっている。
ドイツの主要紙であるディ・ヴェルト紙のウルフ・ポーシャルト編集長は、ブラック・ブロックを1920年代のイタリアのムソリーニ政権(ファシスト党)の国防義勇軍、呼称「黒シャツ隊」に類性があると指摘する。ブラック・ブロックの参加者の黒ずくめの服装は「黒シャツ隊」を真似たもので、恐怖と不安を与える、ファシスト的で、違法な暴力的な行動をとるといった特徴が共通していると述べている。
ブラック・ブロックは同じイデオロギー、固定的なメンバーで結成される団体ではなく、同じ装束に身を包んでいる(黒ずくめ)だけで誰でも参加できる「一時的集合体」である。黒い装束と黒いマスクで顔を隠す目的は、警察による参加者の特定を難しくするためである。当然、違法な暴力的行為、警察との対立、暴動を起こすことがブラック・ブロックの目標である。参加者の多くは現状への不満や怒りを持つ若者たちで、政治参加より暴力と破壊行為で現体制や社会へのメッセージを出すことにある。
今回、ドイツでテロリスト集団と認識されたブラック・ブロック。欧州における若者層の失業率の高い国では、若者の現体制への不満は高く、反政府デモやブラック・ブロックへの参加も拡大している。ブラック・ブロック勢力が拡大すれば、警察が対応できない内戦状況に発展していく可能性さえある。国際的な支援組織と動員の資金源の洗い出しが緊急の課題である。
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