Photo: theeconomiccollapseblog
2017年に入り、金融機関の経営破綻の恐れなどによる信用不安から、預金者による取り付け騒ぎが起きないための措置がEU諸国の間で検討されてきた。6月のスペインの銀行バンコ・ポピュラールの取り付け騒ぎが、急速な流動性の悪化を招き、銀行の破綻を早めたことが、措置の早急導入の検討となっている。
そこで検討されているのが、銀行の預金を一時的に凍結することである。銀行に破綻を阻止する解決策を探る時間の余裕を与える目的で検討されているが、措置の導入で預金者がより敏感に噂や不確実な情報で取り付け騒ぎがかえって起こりやすくなる可能性も考えられる。
バンコ・ポピュラールの取り付け騒ぎ
破綻が懸念されていたバンコ・ポピュラールは、3月末から株式取引の最後の日までの2カ月の間に、預金総額180億ユーロ、預金全体の4分1が引き出された。破綻直前には、1日平均で20億ユーロ、主に大手企業、政府機関、ヘージファンド、地方政府などの大口預金者の預金払戻しが急速な流動性の悪化を招き、経営破綻に直面しているとして、ECBはサンタンデール銀への売却による救済策を採択した。
欧州委員会(EC)と欧州中央銀行(ECB)は、バンコ・ポピュラールのような経営が悪化して破綻の可能性が高まっている銀行に取り付け騒ぎが起きない措置の導入を急いでいる。それはEUの中で、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの銀行と並んで、ドイツの地方銀行も不良債権問題で経営難に落ちる可能性が高いからである。さらに、他の銀行への連鎖的な影響のリスクが高く、EU圏が金融危機に落ちないための措置でもある。
預金の一時的凍結
現在、破綻処理中の銀行に認められている資金支払い猶予(モラトリアム)期間は2日で、預金保険でカバーされている(10万ユーロ以下の預金額)顧客の預金は適用外である。しかし、検討されている案は預金の凍結で、預金の引き出しを5日間凍結、場合によっては最大20日まで凍結の延長が可能となる。
また、預金保険でカバーされている預金も適用対象となる。預金が凍結されている間、規制当局は銀行の資産価値を査定、適切な対応、救済策を検討するのが狙いである。
最新の案のエストニア案では、預金者の経済状況を考慮して、1日に上限が設定された額の預金引き出しを可能とする枠組みの必要性が提示されている。EU法となれば、預金の凍結は避けられないことになる。ますます、銀行、預金をすることへの不信感が高まるばかりである。凍結措置で取り付け騒ぎが早い段階で起きるリスクが増大する恐れがある。
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