2型糖尿病の病因となるSLCA16遺伝子の変異

01.07.2017

Photo: #mct

 

糖尿病患者の90%を占める2型(注1)は後天的な原因で進行するが、発症は遺伝的な要因が存在すると考えられていた。MITとハーバード大学の研究グループは2型糖尿病のラテンアメリカ人の遺伝子を解析した研究で、SLCA16遺伝子の変異による肝臓細胞の機能喪失が2型糖尿病の病因であることを突き止めた(Cell 170 1 199 (2017)))。

 

(注1)糖尿病は血液中の血糖値(グルコース濃度)が異常に増大する疾患で90%を閉める2型では膵臓のインスリン分泌量が減少し筋肉や脂肪へのグルコース取り込みができなくなる。2型患者は世界で4億人以上、死亡原因の7位となっている。

 

2型糖尿病の遺伝子構造は解明されていたがどのような変異が疾患を引き起こすのか知られていなかった。研究グループは欧州人に比べて糖尿病が多いラテンアメリカ人9,000人の遺伝子を他の研究機関と協力して解析した結果、30%高い2型糖尿病リスクとなる変異との関連性を見出した。

 

 

研究グル―プはさらに関連すると考えられている遺伝子群の中のSLCA16遺伝子が2型糖尿病との関連が疑われる変異を持つことを発見した。より詳細な解析でこの結果を確認できたが、その変異が病因となるメカニズムはわかっていない。研究グル―プはMITとハーバード大学(注2)によるラテンアメリカ人の2型糖尿病のゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study;GWAS)の研究手法を発展させた。

 

(注2)MITとハーバード大学の遺伝子医学の研究グループを合体させた研究体制(Broad institute)の遺伝子変異を疾患臓器の機能損失と関連づけ遺伝子機能を阻害して、検証する手法(下図)を用いる。

 

 

 Credit: BROAD Institute

 

SLCA16遺伝子は細胞膜を通して分子輸送に関係する遺伝子の一種だが、そん遺伝子の作る蛋白質は種々の機能に関わっている。研究グループは変異が遺伝子機能を低下させる2つの異なるメカニズムを提案している。一つは肝臓細胞中で遺伝子機能発現を低下させるもの、もう一つは他の蛋白質との相互作用を阻害するものである。

 

SLCA16遺伝子の全機能を喪失すると2型糖尿病の兆候であるインスリン抵抗性が増大することが確認された。このことから2型糖尿病の治療にSLCA16遺伝子の機能発現が指針となる。この研究によって2型糖尿病の遺伝子学的治療が将来可能になるとみられる。