Credit: Earth and Planetary Science Lett.
軽石といえども長く水に浮くことはできないが、世界には極端に長い時間(数年)にわたって水に浮く特殊な軽石も存在する。しかし時間が経過するとこうした軽石は最終的に沈む。その長期間浮かび続けてやがて沈む理由は謎であった。このほど高輝度X線ビームが得られるバークレイ研究所の放射光施設(ALS)で行われた水に浮く軽石のX線透視実験により、長い間解明されなかった謎が説明された(Earth and Planetary Science Lett. 460, 50 (2017)。
この特殊な軽石はつながって長期にわたって海洋を漂い、数1000kmも移動することが知られている。この浮遊する軽石が重要である理由は養分の豊富な軽石に生息する生物が大陸から大陸へ移動する「種の移動」のメカニズムに関わっているからである。
これまでにも軽石中に無数に存在する空間にたまった空気で見かけ上の比重が小さくなると解釈されていたが、問題はなぜ長期間浮遊出来るのかが謎であった。軽石がポーラスならば水を吸ってすぐ沈むはずだからだ。そこで研究者らは軽石の空間が閉じていて空気が流れでないと考えたが、軽石の内部の空間は連結していて一箇所に水が入ると、全体が水没することになる。
浮き沈みする軽石がヒントに
ヒントとなったのは一部の軽石の夜間は水に沈み日中は水面に浮く、時間変動であった。つまり水の出入りは一方的(非可逆的)なものではなく、微妙な力でバランスを保っているのである。細孔になると支配的なるのは水の表面張力である。研究チームはグアテマラから取り寄せた軽石を試料として高空間分解能(μm)で透過X線イメージングを行った。得られたデータから3Dイメージを構築した結果、軽石中の空孔の中の空気と水の分布を詳細に解析することに成功した。
その結果、気体が捕獲される過程に表面張力、すなわち水分子と空気の相互作用によって生物が水表面を動き回り「生命を維持する」ことがわかった。また研究グループはパーコレーション理論によってつながった軽石中の空孔ネットワークに空気が取り残される(水分子が侵入する)様子が解明された。
この研究の手法で海底火山でつくられた多孔質の軽石が海面に運ばれたメカニズムの解明も気体されている。