アルツハイマー、パーキンソン、ハンチントン病の共通因子が発見される

24.05.2017

Credit: Loyona University Chicago

 

認知症の代名詞となったアルツハイマー病は全世界で350万人以上が発症するが、難病である神経変性疾患のパーキンソン病、大脳中心部の神経細胞が変質するハンチントン病に共通の因子として、脳細胞を変性させる異常蛋白質が存在することがわかった。

 

 

脳疾患の共通因子

シカゴロヨラ大学の研究グループはパーキンソン病、大脳中心部の神経細胞が変質するハンチントン病に脳細胞を破壊する能力を持つ共通の異常蛋白があることを見つけた。この研究によりこれらの脳神経疾患の機構解明が進み、脳内で異常な神経細胞が増殖を阻害できる治療法につながると期待されている。

 

今回の発見はまたひとつの脳神経疾患の抜本的な治療法が確立すれば、他の脳神経疾患にも適用できる可能性を示したことでも注目される(Acta Neuropathologica 2017)。特定の異常蛋白の細胞群を変性しそれらの小胞を破壊することが抜本的な治療法となる。

 

脳神経疾患は脳神経細胞のアポトーシスで発症するが、別の部位の神経細胞がそうなることで特定の神経機能が失われる。アルツハイマー病は記憶細胞、パーキンソン病やハンチントン病では運動機能をつかさどる神経が損傷することで症状が引き起こされる。これらの神経疾患は進行性で機能が徐々に損なわれるがいずれも基本的には治療不能である。

 

 

神経を破壊する異常フォールデイング蛋白

これまでの研究からこれらの疾患では異常フォールデイング蛋白の細胞塊が形成され、それらが細胞から細胞に移って細胞のアポトーシスを引き起こすことが知られている。アルツハイマー病ではタウ、パーキンソン病ではα-シヌクレイン、ハンチントン病ではハンチンテインがそれにあたる。

 

今回の研究ではこれらの異常フォールデイング蛋白が正常細胞に侵入するメカニズムを調べ、いったん異常蛋白が正常細胞内に取り込まれると細胞小胞に入り込み小胞を破壊し核外細胞(サイトプラズマ)を損傷することを見出した。さらにこのときの細胞がどのように異常蛋白に対処するかを調べた結果、壊れた小胞や蛋白細胞塊が集められ、異常蛋白が破壊しやすくなることもわかった。

 

トップ写真の緑の部分がα―シヌクレイン蛋白を含む破裂小胞が蛋白細胞塊と融合しようとしている状態を示している。

 

 

脳神経疾患の治療法への道

アミロイド蛋白の細胞破壊がエンドサイトーシス小胞破裂によって起きる、としたロヨラ大学の研究結果は脳神経疾患の基本的なメカニズムを分子生物学的に説明するもので、新たな脳神経疾患の治療開発の指針となると期待されている。