Photo: eliawire
ノースカロライナ医科大学の研究グループはアルツハイマー症を引き起こす因子を探る一連の研究により脳細胞のアミロイドβ蛋白質及びタウ蛋白質と活性化された免疫細胞の異常な凝集が起きること、これらの蛋白質と活性化された免疫細胞が正常な脳細胞を攻撃することでアルツハイマー症が発症することを見出した。
研究によれば現在臨床試験中の神経細胞の蛋白質(HDAC6)を阻害する薬剤(ヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤、TUBASTATIN A)がアルツハイマー症で損傷を受けた脳細胞の治療に効果があることも明らかにされた。
この研究でアミロイドβが免疫細胞の炎症反応によって、アルツハイマー症患者に特有の脳神経細胞の損傷を引き起こすかが明らかにされた。このメカニズムに重要な蛋白質としてMMP-9とHDAC6が特定された。
これらの蛋白質を標的とした薬剤開発によってアルツハイマー症の治療は大きく進展すると期待されている。発達障害・精神疾患に関与する遺伝子 CAMDI の欠損マウスは自閉症様行動を示す(下図)。HDAC6の過剰な活性化により、神経細胞の移動を調節する中心体が未成 熟となり、神経細胞移動の遅延(自閉症の原因)を引き起こすことが知られている。この場合にもHDAC6 特異的阻害剤である TubastatinA を投与すると、神経細胞の移動は正常に戻り、自閉症も回復する。
Credit: embor.embopress.org
現在、世界各国が頭を悩ます認知症患者は4,400万人。専門家の調べではそれが2050年までに1億3,500万人になると予想されている。今回の研究はこうした脳神経疾患が遺伝子・分子生物学的治療法の適用で治療が可能であることを示唆している。
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