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2次元ネットワークの炭素素材であるグラフェンは新しい電子デバイス材料として世界各国で精力的に研究が行われている。中国と米国の研究グループが高圧下で合成に成功した高密度ガラス状炭素が「固くて柔軟な」従来は相反する性質を同時に持つ新材料として注目を集めている(Science Advances 09 Jun 2017: Vol. 3, no. 6, e1603213)。
炭素原子は(最大4個の共有結合が可能な)結合に使える電子を4個持つため種々の電子配置で3種の結合様式を持つ。グラフェンはそのうちの一つであるsp2結合でつくられた2次元ネットワーク物質であり、ダイアモンドはsp3結合でつくられた3次元構造を持つ。新素材の構造はガラス状で(下図A)グラフェンとグラファイの中間に位置するsp2とsp3結合が混在する”2.5次元”ネットワークである(下図B)。
グラフェンシートを数層重ねて高温高圧に置くと層間に1/5の炭素原子がsp3結合に変化し層同士が結合される。この層間の結合によって2次元ネットワークの強度が高くなる。しかし結合する原子位置に秩序がないためガラス状グラフェンとなる。
Credit: Science Advances
このガラス状グラフェンは硬さがダイアモンド並みであるにもかかわらずゴムのような柔軟性が特徴であるが、これはその構造がグラフェンとダイモンドの混合であることによる。この新素材は軽くて伸びやすくしかも機械的強度を必要とする応用に最適だが、製造方法が単純な製造コストは低い。
ICチップの低コスト化にはシリコンを同族の炭素で置き換える必要があるが、その際には炭素ネットワークの電子移動度を向上させることが鍵となる。今回の研究では新炭素素材の電気的性質がグラフェンのものであり、その課題をクリアしているため、新電子材料としてのインパクトも大きい。
なおガラス状グラフェンも開発されている。またダイモンド量子計算機やカーボンナノチューブRAM、グラフェンデバイスに今回の新素材も含めると、21世紀は炭素の世紀と呼べるかもしれない。