Credit: PNAS
ニューヨーク大学の研究グループはヒト細胞内に内蔵される生命時計(核細胞の運動)を発見した。この細胞核の運動と生物活動の関係を調べることで、病気の発症メカニズムの理解が進むと期待される(Chu et al., PNAS (2017))。
これまでは生命サイクルでの特定時期についての知見は死んだ細胞で研究するしかなかった。研究グループは細胞核が生命サイクルが進むに従って「揺らぎ」の頻度が減少することを見出したことで、このことから老化した細胞や病気にかかった細胞の理解を深めることができる。
細胞核の形状と大きさは生命サイクルが進むと大きく変化することが知られていたが、「生きたままの」観察ができないために細胞核がその形を短時間で変化させることがあるかどうかは不明であった。
そこで研究グループは生きた状態で細胞の形を実時間観測できる蛍光顕微鏡を用いて実験を行った。その結果、ヒト細胞核はこれまで知られていない核膜(下図)が数秒間隔で揺らいでいて、この運動の振幅は生命サイクルが進む(老化や病気)で低下することがわかった。
Credit: study.com
細胞核の「揺らぎ」運動が細胞内の時計機能の指標となると考えれば、その細胞が生命サイクルのどの時期にあるかが推定できる。心筋症、筋ジストロフイー、癌などの病気の発祥によって核膜の機能が低下する。健康な状態と病気の状態で核膜変位のメカニズムを理解するのに、細胞内時計機能が役立つものと期待されている。
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