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現代人の死亡原因のトップは心臓疾患であるが、スタンフォード大学の医療研究グループはこの光合成酵素を治療に使えることを発見し話題となっている(Science Advances 3 6, e1603078 (2017))。研究グループは心臓疾患を持つマウスの血液に光合成細菌を注入し光刺激を与えた結果、血液中の CO2を吸収し酸素濃度が上昇し疾患が改善された。
血液中の酸素を増やすには
この方法は研究グループが血液中の酸素濃度を増やすための手法を調べて行くうちに思いついたもので、奇想天外ではあるが光合成で酸素とショ糖が生成されれば両方が、生物活性に必須であることからすれば理にかなったものとも言える。
心臓疾患では心筋自体は血液ポンプの機能を失っているわけではない。しかし血液中のCO2濃度が増大し酸素濃度が低下すると生命活動が維持できなくなる。そこでCO2を取り込み酸素を排出する光合成機能があれば、この酸素欠乏状況を改善できる可能性がある。
このため研究グループはほうれん草やケールなどの緑色野菜を粉砕して心臓細胞に投与してみたが、葉緑体を細胞外に取り出すと死滅してしまうため効果が出なかった。そこで光合成細菌(藍藻)を心臓細胞に注入してみたところ疾患の治療に効果があることを見出した。
Credit: Wiki
人間への適用は将来の課題だが植物の基本的な機能である。人口光合成は水分解や燃料合成だけでなく、心臓疾患の治療と広範囲な応用が可能であることは興味深い。膨大な研究開発の努力にもかかわらず、人口光合成の研究はエネルギー変換効率が0.1%と低迷していることが光合成酵素が完璧な「分子機械」であることを物語っている。
しかし光合成サイクルの詳細が明らかになれば、エネルギー危機対策、環境汚染対策、心臓疾患治療が一気に進展する可能性がある。科学技術の発達で枯渇するエネルギー、汚染された地球環境と増大した心臓疾患に、太古の昔からある光合成が救世主となることは皮肉であるものの、最先端を生物に学ぶことは自然な流れなのかもしれない。