入射器を刷新してルミノシテイを追求するLHC

10.05.2017

Credit: CERN

 

数々の偉業を成し遂げたCERNのハドロン衝突型円形加速器LHCの入射器が実は39年前のものであることはよく知られていない。LHCはCERNの加速器軍のアップグレードの一環として、LHCの入射器(直線加速器)Linac 2を新しい設計のLinac 4に入れ替えた。

 

加速器は一般に当初の性能での運転期間を終えると、ルミノシテイをあげる改良を行って実験精度をあげる。Linac 4は試験運転の後に2019-20年に予定されているルミノシテイ(輝度)をあげるアップグレードの長期シャットダウン中にLHCに組み込まれる。

 

 

Credit: project-linac4.web.cern.ch

 

LHCの本体や検出器と同様にLinac 4の設計には世界中から加速器専門家が集まり国際共同開発によって、直線加速器の先端技術が集結されている。Linac 4は90mの長さで地下10mのトンネルに設置されたが、完成までに10年を要した。

 

 

ルミノシテイ追求 

Linac 4は電子過剰で負電荷を持つ陽子イオンをLinac 2の3倍となる1.6GeVまで加速して陽子シンクロトロンブースター(円形加速器)に打ち込む。エネルギー増大と過剰電子プロトン加速によってLHCに打ち込まれる陽子ビームの強度は倍増する。

 

LHCのピークルミノシテイはアップグレードで5倍に増強される。このため得られる衝突実験データ量は10倍になる。

 

今後のアップグレードでLHCは2030年までは世界の加速器実験の先端にいることは間違いない。これまで加速器の世界で最高のコスパとされてきたのはスタンフォード大学のSLACにあるSPEARだが、もしかするとLHCは取って代わるかもしれない。それも世界中の研究機関との国際共同事業が機能したからである。

 

 

テーブルトップ加速器への道

 

直線加速器の鍵を握るのは空洞のR&Dで超伝導加速空洞の閉める割合が高い。超伝導加速空洞で小型化と高性能化は両立するが、しかし一方で加速器の大型化にも限界が見えてきた。加速器空洞技術が進歩しても飛躍的な小型化・低コスト化は望めない。それでもレーザーウエークフイールドなどの新しい原理による新型加速器はテーブルトップになるかのせいがある。そうなれば医療用や非破壊検査に使われる加速器のダウンサイズが可能になる。CERNはそこまでを見通して小型化の研究開発も並行して行なっている。