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現地時間の2017年8月21日(日本時間の22日)、ハワイを含む北太平洋の東側と北米の全て、北大西洋、アフリカ北部、西ヨーロッパまでの広い地域で日食が観測される。特に北米では西海岸から東海岸まで皆既日食が横断するため人口密集地の局所的な宇宙天気(電離層の状態)への影響が懸念される。
皆既日食では太陽の紫外線が当たらない電離層の場所ができ穴が開く現象が電波の電離層による反射で観測されている。テキサス大学の研究グループはテキサス大、サンデイエゴ計算センター、NASAのスパコンを連携し太陽観測衛星データを活用して、皆既日食の前後の太陽コロナ(太陽プラズマ)の挙動を予想した。
3箇所のスパコンを連携することによる計算能力の増強は650万グリッドのシミュレーションの計算を可能にした。これによって精度だけでなく、モデルを改良することができ、信頼性の高い太陽コロナ予測が可能になった。また研究では実測データとしてNASAの太陽観測画像(HMI)とソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリーの衛星画像を用いた。
Credit: greatamericaneclipse
皆既日食で電離層に穴があくと電波送受信状態や、オーロラ発現にも影響を与えるが、1859年のカーリントンイベントと呼ばれる大規模な太陽嵐の期間中、太陽フレアで巨大なコロナ放出で磁気嵐や低緯度オーロラが記録された。日食は電離層の電子密度を局所的に低下させるので、電離層風によるプラズマ電流を通して地磁気に影響を与える。
2009年7月の日本周辺の日食時の電離層変動はスパコンシミュレーションで予測が行われている(https://www.nict.go.jp/press/2009/07/21-1.html)が、今回の研究は太陽観測衛星データを基に太陽コロナの予測を行なったもので、危険な巨大太陽フレアの理解を深めることが期待されている。
米国を横断する皆既日食のベルト(上図)が都市部が含まれている。今回は局所的な地磁気の変化はの影響よりも「一生に一度のイベント」として皆既日食を肉眼で観察しようとする人々がもたらす人為的な影響の方が大きいかもしれない。交通が渋滞し仕事を抜け出す人々によって引き起こされる経済損失である。
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