変質者の異常さは脳神経障害に起因

10.07.2017

Photo: occupycorporatism

 

刑務所に収容されている50名の囚人の脳MRI検査の結果を調べた最近の研究で変質者が発作的衝動に任せて反社会的な行動に出るのかが科学的に解明された。研究によれば変質者の行動の特徴は突発的な行動に価値を見出す一方でそれが引き起こす(将来起きる自分にとって不利なはずの)問題を軽視することにある(Buckholtz et al., Neuron July 5, 2017)。

 

研究グループは変質者が感情を持たないために凶悪な犯罪行為に及ぶと考えてきたが、問題にすべきことは変質者が感情を持つかどうかではなく、なぜ彼らが犠牲者にとって致命的隣また社会的な損失となる凶悪な犯行に走る判断をするのかである。

 

変質者はこれまで冷血で感情を持たないとされてきたが、研究グループは感情的な因子が凶悪な犯行に駆り立てるとは考えていない。研究は変質者が異常な行動を起こした際の代償と利益を比較して行動を決めないことに注目した。

 

しかし犯罪者の脳MRI検査を研究所で行うことはできないので、研究グループはウイスコンシン州の刑務所内にMRIを持ち込んで囚人の脳検査を行うことにした。この研究では癌診断でスクリーニングに使う可搬型のコンパクトMRIが使われた。

 

全部で49名の囚人の脳検査が行われ、「その場で少額のお金をもらう」か「後でより高額を受け取るか」の選択をさせた際の脳活性を調べてモデルと比較した結果、変質者の程度が高いほど、代償を評価する機能を持つ”ventral atriatum”(下図)と呼ばれる脳の部位が活性化されることがわかった。

 

 

Credit: mindblog.dericbownds

 

このことは精神異常者が判断する際に瞬間的な行動に過大な価値を見出すことを意味している。”ventral atriatum”領域を詳しく調べた結果、終脳の皮質下構造(線条体)と物事をやろうとする“意欲・動機づけ”や他者の気持ちや考えを推測する機能を受け持つ内側前頭前皮質、”medial prefrontal cortex”との繋がりが弱いことがわかった。

 

この結果は行動の結果が未来に及ぼす(負の)影響、例えば逮捕や服役など、が正当に評価できないため、その場の利益をその後の代償より過大に評価して行動を優先することを説明できる。

この研究によって変質者が冷酷で残忍な怪物というイメージが正しくなく、脳機能の一部が昨日不全な普通の人間であることが示された。変質者は通常の判断ができない脳機能喪失患者なのである。