Credit: Jim Swoger, Center for Genomic Regulation (Barcelona)
生体の3Dイメージを観察する蛍光顕微鏡に分類されるライトシート蛍光顕微鏡(Light Sheet Flourescenec Microscopy, LSFM)がある。蛍光顕微鏡は励起光を試料に照射して基底状態に戻る際に放射される蛍光を励起と共通の対物レンズで行う。
従来の蛍光顕微鏡は焦点以外の試料を照射するので、焦点周辺の迷光(蛍光)がバックグラウンドとなり生体試料では光照射による損傷も問題となる。これに対してライトシート蛍光顕微鏡では励起工学系と検出系を別のテンズ系としているため、観測する対象のみを励起することができる。そのため生きた試料に対して数100ミクロンまでの奥行きで3Dイメージングが可能になる。上のイメージは胎児マウスの頭部。
3DイメージはMRIやX線CTでも得ることができるが、分解能はmmオーダーで照射時間によっては被曝や放射線損傷の危険性もある。ライトシート蛍光顕微鏡の空間分解能はミクロン以下であり、光照射する部分は観測部分(焦点)のみなので、生体への影響がない。また最新のものではデジタルスキャンにより、1cm以下の3Dイメージが短時間で計測できる(J. of Histochemistry & Cytochemistry 59 129 (2011)。
Credit: dev.biologists
ライトシートと呼ばれる所以は可視領域のレーザー光をコリメータとエクスパンダーで焦点で絞り光のシートを作り試料を透過させる原理(上図)にある。試料の励起で放出される蛍光は直角方向に置かれた光学系と検出器で行う。生物試料は試料セル中で溶液中に置くことができるので、「生きたままの状態で観察ができる。2次元イメージ計測後に垂直方向に焦点をずらして計測し、2Dイメージを重ねれば3Dイメージが得られる。マウスを対象とした発生生物学研究や顔治療の臨床試験などでは欠くことのできない3Dイメージツールである。
このほど米国の研究チームは回折がなく、遠くに伝搬しても強度分布が変わらない、つまり広がらない、ベッセルビーム光学系を用いて生体試料の3Dイメージの高速計測が可能な新しいライトシート蛍光顕微鏡を開発した(Nature protocols 9, 1083 (2014))。従来の方法では光シートで励起された面を観測するのに対して、この方法はベッセルビームを走査するライトシートを用いることによって、バックグラウンドとなる焦点以外の励起を少なくしてコントラストを改善しCCDカメラによる高速測定が可能になった。ただしベッセル光学系の調整は複雑で最適なライトシートを用いることがポイントとなる。
Credit: Nature protocols