Photo: omicsonline
気候変動は地球上の多くの生物にとって不都合で、絶滅種が増えて多様性が縮小すると考えられている。しかし例えば気候変動を受ける牧草地に単一生物種でない多様な種が生息している時、必ずしもそうで無いことが最新の研究で明らかになった。
ライプチヒ大学を中心とする研究グループは、気候変動が生物多様性に与える影響は正にも負にもなり、どちらになるかは多様性の大きさによると考えている。ミネソタ州のシダー峡谷の30箇所以上で研究グループは単一の植物から最大16種の植物が育つ場所を比較し、ランプにより約3度気温を上げ、生物多様性を観察した。
その結果地表の植物の生命機能には地中の線虫の活動が大きな影響を与えており、気温上昇はこうした土壌中の生命活動を助長することから生物多様性を維持するには生物多様性が不可欠であることを見出した(Sci. Adv. 3:e1700866 (2017))。
多様な環境ほど気候変動の影響が少ない
しかし多様性が気候変動(気温上昇)で損なわれる多様性を補うのにも限度がある。多くの植物種がある地域ほど気温上昇で増大する土壌中の線虫種の種類が環境に適応した種に限られる。そのため特定の種が増大することは多様性を狭めることになる。長期的に見れば適応できる種が選択され多様性は失われていく。
一方、単一種の牧草地は農業が進み特定種(作物)に限られる状態に対応すると考えられる。
下図A、Bはそれぞれ分類学上の線虫の多様性、多次元尺度分析の結果で、後者は気温の変化がその地域に生息する植物の多様性に依存していることを示す。
Credit: Scientific Advances
この研究の結果は気候変動下で地球環境を維持するには生物多様性が必要とする環境保護者に有利であるとともに、気候変動がすべての生物に不利となる訳ではないことを示している。つまり温暖化によって全ての生物種が一様に影響を受けるものではないこと及び、制限付きながら気温の上昇が必ずしも不利な環境変化ではないことを示唆している。
Credit: Jill Banfield/UC Berkeley, Laura Hug/University of Waterloo (CC BY 4.0)
上図に示したのは生命のツリーと呼ばれる生物多様性のダイアグラムである。実際の地表には今回の研究対象となった16種を遥かに越える種の生物が生息する。気候変動の環境への影響は地域ごとに、異なる多様性に対応して予測しなければならない。