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マクギル大学の研究グループは心筋を構成する筋節の状態を詳しく調べる手法を開発した(PNAS 114, 8794 (2017))。開発された手法はミクロンスケールの針による筋節(サルコメア)の駆動力の測定と特殊な顕微鏡観察による収動作の観察を組み合わせたことで、筋節集合体の筋節の収縮を独立に観察できることが特徴である。
筋繊維はコイル状につながった2,000-2,500の筋節でできている。研究グループは筋肉細胞の基本構造である筋原線維(Myofibril、下図)(注1)を取り出し、単一の筋節(注1)に注目して筋肉収縮と緩和の刺激を起こす(濃度の異なる)カルシウム溶液に浸した。
(注1)骨格筋の筋繊維の単位で筋収縮を起こす。直径は1~2μmの繊維構造を持ち、1本の繊維には、数100本から数1000本の筋原線維を含む。
(注2)骨格筋を構成する筋繊維をつくる筋原線維の基本単位。軸方向に並ぶ、柔軟な蛋白質で結びついた微細な繊維。主にアクチンとミオシンからなり筋肉収縮の源となる。
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研究グループは健康な人の筋原線維では周囲にある全ての筋節が一つの筋節の刺激で集団で動くことを見出した。複数の筋節間の運動の「協調機構」は新しい発見で、筋肉収縮のミクロ機構では筋節間の協調機構が本質的であることを示唆している。下図のように研究ではマイクロチャンネル(Microfluidics)と探針で筋節集合体の駆動力を独立に調べ、筋節同士の相互作用を観察した。
Credit: PNAS
研究グループは心不全や筋ジストロフイーなどの心臓疾患の場合には筋節間の協調機構がどのように損なわれるのかを調べるとしている。筋肉の収縮メカニズムは筋節間の協調機構に集約され単位となる分子同士の相互作用の理解が求められることとなった。筋肉収縮の基本単位となる分子相関の動力学的な知見が得られれば、心臓疾患の根本的な治療も期待できる。