誇張された地球温暖化を肯定論者が認める

21.09.2017

Photo: npr.org

 

パリ議定書の根拠となる平均地球表面気温の増大が誤りであったことが最新の研究で明らかになった(Millar et al., Nature Geoscience online Sep. 18 (2017))。CO2の温室効果は誇張されていて、温暖化の度合いは地球モデルで予想された数値より低いことがわかった。

 

IPCCの報告書が警告した産業革命後から2022年までに1.5C上昇するとしているが、残すところ5年となった現在、2022年までにこの上昇が起こる可能性はほとんどない。地球モデルによる気温上昇の予測が事実と異なることがはっきりしてきた。

 

20世紀から1Cの上昇があったとしても、地球モデルの予測が現実となるには5年間で0.5C上昇しなければならない。上昇率は10年間で0.25Cであることから、実際に後5年で地球モデルの予測が現実となる可能性はほとんどない。論文では2015年以降のCO2排出量を200GtC以下に制限すると、気温上昇は0.6Cに収まる。これは地球モデル予測の66%に相当する、すなわちIPCCの根拠となった地球モデル予測があてにならないことがはっきりした。

 

大まかにはCO2排出量と気温上昇は直線関係にあるが、地球モデル予測もシナリオ次第で予測は大きく異なり、上昇率の少ないシナリオ(RCP2.6)を除けば21世紀末までの気温は1.5Cを越えるとされてきた。2030年まで現在の排出量を越えずにそれ以降は減少するとすれば、20世紀から上昇が1.2-2Cに収まるとしたシナリオRCP2.6は実現できる可能性が出てきた。

 

redit: Nature Geoscience

 

このことは21世紀末に1.5C以内に気温上昇を抑えることが、CO2排出量規制で可能な範囲にあることを意味している。この研究結果は地球温暖化の議論に決着をつけた。破滅的な地球温暖化の予測が正しくないこと、CO2排出量規制によって上昇率の低いシナリオ(RCP2.6)が実現可能であることが明らかになったためである。

 

ロンドンタイムスによるとこれまで頑なに最悪シナリオにしがみついて深刻さを訴えてきた温暖化肯定論者たちも、「我々は間違っていた」として予測の誇張を認めてきている。欧州で始まり中国に波及したICE(内燃機関)車廃止の潮流の背景には、CO2排出量規制で最悪のシナリオを防げる可能性が出てきたことがあるのかもしれない。

 

一方で平均地球表面温度の計測結果にも任意性があり、誇張されてきたことも考慮すれば議論が全て決着したわけではないが、少なくとも地球モデル予測の誇張ははっきりした。今後はモデルの改良と同時に表面温度の計測の精度をあげ衛星データを含めて計測面での改善措置が求められる。