Photo: United Nations OCHA/flickr/cc
米オバマ大統領は14日に、イエメンの反政府勢力が米駆逐艦に向けた攻撃(被害はなかった)に対し、報復攻撃を実施したことを戦争権限法に従がって議会に報告した。米国はイエメンでの特定の標的を攻撃する権利があり、今後も限定的な防衛のための攻撃を行うと、イエメン紛争への米軍の介入、武力行使を開始したことを明らかにした。
フーシ勢力による未確認攻撃に報復
米軍はイエメン沖の紅海を航海中の米誘導ミサイル搭載駆逐艦「メイソン」に向け、9日と12日にイエメンの反政府勢力「フーシ」の支配地域からミサイルが発射されたことの報復攻撃を13日に行った。米軍はミサイル発射がフーシによるものかの確認はとれておらず、フーシ側の実行声明もでていない。
駆逐艦「ニッシェ」はトマホークミサイルで、フーシ勢力の支配地域にあるレーダー施設3カ所を全て破壊したことを発表している。イエメンへの直接攻撃は初めてで、米軍がイエメンでの紛争に介入したことになる。
イエメン紛争
2015年3月に反政府勢力フーシは、サウジアラビアと米国が後ろ盾となっていたスンニ派のハーデイ政権を転覆、首都を支配地域に置いた。サウジアラビアにとって、隣国のイエメンがシーア派のイランから支援を受け、イランの「代理国家」となるのを恐れ、イエメンでの空爆を始めた。その後、サウジアラビア主導の有志連合が結成、フーシ派勢力の打倒に向け戦闘が18ヶ月続いている。
米国のイエメン紛争への関与
米国の2011~2015年の筆頭の武器輸出先はサウジアラビアであった。イエメンでの軍事攻撃が始まってからの11ヶ月間で、サウジアラビアを含む湾岸6カ諸国に330億ドル相当の武器を輸出している。オバマ政権が2009年に発足して以来、サウジアラビアが購入した武器は過去最高の1150億ドルにのぼる。
サウジアラビアによるイエメンでの作戦について、武器の提供のほか、米国は情報の提供、戦闘機の空中給油などの間接支援を行ってきた。また、イエメン沖の紅海のバブ・エル・マンデブ海峡沿岸は、フーシ勢力の支配下にあるため、フーシ勢力への武器供給の拿捕と経済制裁の一環として、アデン湾近海に米軍艦が派遣され、認証ずみの船舶の航海以外は、海上封鎖を実施している。
イラン軍艦が派遣
米国の報復攻撃後、イランはアデン湾に2隻の駆逐艦を派遣している。アデン湾で緊張が高まる状況にある。2015年7月には、米海軍とイラン海軍のにらみ合いとなった過去がある。米駆逐艦に向けて、イラン海軍はミサイルの発射訓練をおこなったことで、武力衝突の危機に直面した。