FBI捜査再開で窮地に立つクリントン氏 Part 1

30.10.2016

Photo: Saul Loeb/AFP/Getty Images

 

 米大統領選挙まで9日。27日にFBIが新たに発見されたメールには、クリントン氏が国務長官在任中に公務で私用メールサーバーを使った問題の捜査に関連するとみられ、捜査を再開することを28日に発表した。発見されたメールはクリントン氏の側近であるフーマ・アベディン氏が使用していたパソンコンからみつかったものである。FBIはアベディン氏が送受信した数万ページに及ぶメールが押収した。

 

 

新たに発見されたメール

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、FBIが新たに入手、捜査対象となっているメールは、クリントン氏の側近であるフーマ・アベディン氏と夫のアンソニー・ウィーナー元下院議員が共有して使っていたコンピューターから発見されたメールである。クリントン氏の私用メール問題の捜査に関連していると思われる、アベディン氏が送受信した数千ページに及ぶメールが押収された。

 

 ウィーナー元下院議員は、未成年女性との不適切な性的内容のメールやり取りを巡りFBIの捜査を受けていた。この別件の捜査の過程でアベディン氏のメールが発見されたとされる。

 

 

フーマ・アベディン氏とは

 フーマ・アベディン氏(写真左)は米国生まれ、サウジアラビア育ちのイスラム教徒である。1996年にヒラリー・クリントン氏の実習生を経て、2000年に上院議員を務めた際、クリントン氏の側近と個人アドバイザーとなる。

 

 クリントン氏が国務長官となった2008年には、首席補佐官代理を務めるが、その後クリントン氏の指示で2012年には国務省の特別公務員の職位につき、国家の機密情報の取り扱い許可が与えられた。この間、クリントン財団と深い関係があるコンサルタント会社のテネオ・グループとクリントン財団のコンサルタントも務める。当時、国務省と上院司法委員会で、公務員兼民間企業のコンサルタントの職務に対する義務違反を侵している疑いで内部調査を受ける。

 

 クリントン氏が国務長官の任期を終えてから、2013年には、クリントン財団の顧問を務めながらコンサルタント会社を設立する。現在、クリントン氏が最も信頼を寄せる側近で、2016年のクリントン大統領選挙運動の副責任者を務めている。

 

 クリントン氏の政治職務を取り仕切っているだけでなく、私生活においても「いなくてはならない」存在となったアベディン氏はクリントン氏への全ての送受信したメールを把握していると思われる。そのことから、「ミニ・クリントン」、クリントンの「影」と呼ばれてきた。クリントン氏が大統領となった際、ホワイトハウス職員のトップとなる首席補佐官に選ばれるのは確実と言われている。

 

 

捜査対象となるメールとは

 FBIがクリントンの私用メール問題でアベディン氏を事情聴取した際、クリントン氏が国務長官任期中に送受信したメールを全てFBIに提出したと証言している。この時、使用していたブラックベリー端末と2台のラップトップが捜査のため押収された。夫のウィーナー元下院議員と共有していた自宅のパソコンは押収対象とはなっていなかったため、今回のウィーナー氏への捜査でパソコンが押収され、捜査を行うなかでクリントン氏の消えたとされる送受信メールが浮上したのである。

 

 

 新たに発見されたメールの中には機密情報が含まれているか、又メールの重要性に関しての評価は現段階ではできていないとしている。メール発見に関して考えられることは、アベディン氏はIMAP(メール受信用のプロトコール)でメールアカウントの全てのメールをコンピューターに移し、その中から消されたとされるクリントン氏のメールが発見された。または、アベディン氏は書類を自宅のプリンターで印刷するために、Yahooのメールアカウントを使用していたことから、クリントン氏のメールを印刷する目的で、メールをYahooアカウントに移し、そのアカウントから消されたとされるクリントンのメールが発見されたかの2つの説が浮上する。

 

 829日に情報公開法に基づく請求に従って公開された、アベディン氏の160件のメールのうち、110件はクリントン氏が国務長官在任中のものとされる。ここで判明されたことは、機密情報がメールに含まれていたこと、アベディン氏はhumaabedin@yahoo.comの私用メールアドレスにこれらのメールを送信していたことである。つまり、今回押収されていたパソコンには、これらメールを含めた数万ページのうち、消されたとされるクリントンメールがYahooメールアカウントに残されている可能性が高いことである。