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国家を持たない民族として知られるシリアのクルド人武装勢力が中心となるシリア民主軍が8月12日、ISがトルコからの補給拠点としてきたマンビジュを制圧した。ISの物資補給はトルコ経由で司令部のあるラッカから140kmしかない国境近くのマンビジュが拠点となっていた。このため補給路を断たれたISは弱体化は避けられない。
マンビジュはトルコとの国境にある通商の要所で、ISは2014年に制圧しこれまで物資や戦闘員の補給拠点としていた。マンビジュが奪還されれば、いよいよ本拠地のラッカ奪還に向けて有志連合は空爆を強化し、地上戦でラッカ奪還を狙うことになる。しかし空爆だけでは勝てないことはアフガンで米国もロシアも経験した。地上戦が決戦となる段階においてクルド人武装勢力の強さが発揮されることになる。
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外国人戦闘員と食料・弾薬の調達が困難となればISの戦闘能力の低下は免れない。地上戦に大きな役割を果たしたクルド人武装勢力はクルド語を話しスンニ派が多い彼らの祖先はオスマントルコに住んでいたが、第一次大戦後に国が分断され、トルコ、イラク、イラン、シリア、アルメニアに分かれて居住を余儀なくされた。
クルド人は国家を持たないが民族意識が高く欧州経由で武器を入手し、武装勢力20万は中東にあって無視できない存在である。米政府筋は、米政府がイラクでスンニ派過激組織と激しい交戦を続けているクルド人治安部隊にCIAが直接武器供与している事実を認めた(参考記事参照)。一方でイラク政府もAK-47などのロシア製の武器をアルビルのクルド人武装勢力に供与した。これによりクルド人武装勢力はアメリカ、ロシアの武器を同時に使用する近代的な戦闘集団と化した。
戦闘能力と士気が高いクルド人武装勢力はトルコにおいて少数民族であり、シリア内戦において北部のクルド人勢力は反アサド政権の武装勢力と内戦状態が続いていた。反アサド勢力を支援する米国との関係が深く、有志連合と協力して地上戦を請け負った形となったが、地元の理を生かした攻撃で一気にマンジュビを奪還したとみられている。
なおISの起源は米国が援助した反アサド勢力からの分派であるが、オバマ大統領も米国の介入が背景にあったことを認めた。
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