Photo: South China Morning Post
FBIの訴訟問題に発展したヒラリー・クリントンの私的メールサーバーにあったイランの核物理学者サハリー・アミリがイラン核開発の情報をCIAに提供したスパイ容疑で処刑された。ヒラリー・クリントンの説明ではアミリは親米主義者としての自発的に情報を漏らしたとされるが、本人は誘拐されて連行されたと反論していた。
サハリー・アミリはワシントンのパキスタン大使館に出頭して本国送還を希望した。2009年にメッカへの巡礼旅行をして以来、行方不明であったサハリー・アミリは米国から発信される動画にたびたび登場するが、のちに(CIAの)圧力に屈して行ったと述べている。
サハリー・アミリは強制的に飛行機に乗せられて米国に連れされた後、精神的圧迫を受け核開発に関する情報をCIAに提供したが、国を裏切るほどの重要な情報を漏らしていないとしている。パキスタン大使館に保護を求めたサハリー・アミリはイランに送還され「私は一人の科学者にすぎない」とし、潔白を主張していた。
米国に誘拐された核開発研究者
CBSとのインタビューでサハリー・アミリは強制的に連行したのはサウジアラビアと米国の諜報部員だと述べているが、米国高官は引き換えに5百万ドルの報酬を受けているという。サハリー・アミリの母親はBBCに絞首刑で処刑され首にロープを巻かれた状態の遺体を引き取ったと述べ、イランの法的執行機関も公式に処刑を認めた。サハリー・アミリは米国を出る際にも報酬とされる5百万ドルは持ち出していない。
一方、サハリー・アミリの処刑でテヘランに拘束されている英国トムソン・ロイター財団職員のザハリー・ラトクリフの処遇への影響が懸念される。ザハリー・ラトクリフはイランにいる2歳の娘に面会のためイランに入り、出国する際に拘束されている。キャメロン前首相もイランに返還を強く求めていた。
食い違うヒラリー・クリントン証言
ヒラリー・クリントンはサハリー・アミリが米国に好意的で自発的にCIAに情報を提供したと証言したのに対して、サハリー・アミドは米国とサウジアラビアによって誘拐され、米国に連行され拘束されていたという。真っ向から対立する主張だがメッカに巡礼をしていた科学者が米国内でパキスタン領事館に保護を求めたことはヒラリー・クリントンの主張に疑問を投げかける。
ヒラリー・クリントンのアドバイザーが私的メールサーバーを使って関与を裏付ける交信を行っていたことも問題であるが、国務長官としてCIAを使って科学者を誘拐させたヒラリー・クリントンの法的責任が問われる。イランの核開発を巡る疑惑はイランが医療用と称して原子炉燃料を超える高濃度濃縮ウランの生産を始めたことが発端で、2016年1月16日に米国など6カ国とイランの最終合意に基づき核開発の縮小が履行され、対イラン制裁の多くが解除されている。今回の科学者処刑問題でイランの核兵器開発を恐れて6カ国会議と並行して核開発関連の科学者の誘拐を合法化した米国の二面性が明らかになった。