ドイツ銀行の資本不足は190億ユーロ

11.08.2016

Photo: thegoldandoilguy

 

 欧州銀行監督機構(EBA)が7月発表した銀行ストレステスト(健全性審査)によると、2行が規制当局の最低資本水準を下回った。モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(イタリア)とアライド・アイリッシュが資本不足と判定された。一方、ドイツ銀行の自己資本比率は、大幅に低下しているが、基準をクリアできたと報告された。

 

 しかし、『銀行は裸の王様である』の著者で、2014年のTime誌の最も影響力のある100人に選ばれたマルティン・ヘルビッヒ氏(現独マックス・プランク公共財研究所ディレクター)は、ストレステストの結果とは反対に、ドイツ銀行の深刻な状況を指摘している。ドイツ銀行は長期的で深刻な金融危機に対応できるほどの資本はなく、公的資金を使って国有化といった救済が必要と提唱している。今後ドイツ銀行の破綻危機への対応策として、国有化の検討が始まると思われる。

 

 

EBAストレステストに疑問

 独欧州経済研究センター(ZEW)はマンハイム大学、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスとローザンヌ大学の共同研究で、ストレステストの結果は、想定するシナリオと分析手法で大きく異なることを明らかにした。EBA2014年ストレステスト、2016年の米連銀ストレステストとマーケット・ベース・ストレステストの3つの方法で分析を行った。

      

 まず、2016年米連銀ストレステストと同様の方法で欧州51行を分析した。その結果、欧州銀行全体で1230億ユーロの資本不足、ドイツ銀行は51行中、最も高い190億ユーロの資本不足にあると発表している。ドイツ銀行の株式時価総額170.5億ユーロを上回る額で、ヘルビッヒ氏の指摘を裏づけるような結果である。

 

 

 EBA方法では、欧州銀行全体で56億ユーロの資本不足、市場ベース(株式市場が今後6ヶ月以内に40%下落した場合を想定したシナリオ)では、ドイツ銀行は600億ユーロの資本不足、クレディ・アグリコルは790億ユーロ、BNPパリバは750億ユーロの資本不足に達した。3行とも資本不足は時価総額を大幅に上回る結果となった。

 

 ZEWは、次の経済・金融危機の際、欧州銀行(特にドイツとフランスの銀行)は資本不足になり、対応ができない状況になると警告している。