Photo: The Telegraph
メデイアはこぞってクリントン候補の支持がトランプ候補を上回り、大統領に選出されると予測する。まるで申し合わせたようだが、南カリフォルニア大学がロサンゼルスタイムスと協力して行った投票登録者に対して行った世論調査の結果は、それらと異なりトランプ候補が優勢である結果を示している。無作為に抽出された毎日400人、週ごとに3,000人の有権者についての結果で、年齢層、性別、収入、人種などを考慮した信頼できる調査である。
大統領選について
全米の有権者数は218,959,000人、人口の2/3、約2億人。このうち選挙の投票に登録した人は66.82%。2012年の投票者率は57.61%。1960年のJFK以来
民主党からは5人の大統領、共和党も5人の大統領が選出されたが、2000年と2004年の共和党政権を最後とし、2008年からは民主党政権が続いている。
候補者の支持率逆転
8-9月の傾向は最近のメデイアが伝える両者の拮抗と矛盾しないが、クリントン候補支持が43.0%、トランプ候補が46.1%と逆転したことがはっきり示された。(下図)
Source: Los Angels Times
両者の支持層が明確になる支持率の内訳
年齢別にみると18-34歳、35-64歳代はほぼ拮抗しているが65歳以上はトランプ候補支持が50.3%でクリントン候補支持(43.8%)に差をつけている。学歴別には高校、カレッジではトランプ候補支持、大学以上の高学歴層ではクリントン候補が優勢となっている(クリントン候補50.7%、トランプ候補の37.2)。
収入別の結果は年収3500ドル以下ではクリントン候補とトランプ候補支持率はそれぞれ48.9%、38.3%で低所得者層の民主党支持がはっきりしているが、35,000ドルから75,000ドルの中間層では逆転し、トランプ候補支持が51.7%、クリントン候補は37.6%と差が開いた。75,000ドル以上の高所得層では差が縮まるがそれでもトランプ候補支持がクリントン候補を上回る。このことは民主党支持が低所得者層に限定されることを示している。
人種別の結果は興味深い結果となった。両候補支持率の差が明白に出ている。白人のトランプ候補とクリントン候補支持率はそれぞれ55.0%、33.9%となる。黒人とヒスパニック系ではクリントン候補支持が80.0%、53.9%とトランプ候補支持の12.6%、31.8%に大差をつけているものの、これまでの世論調査結果と異なり、黒人とヒスパニック層の両者の差が縮まった。支持政党に開きが大きい移民に選挙権を持たせて勝利を得る(民主党の)公平でない選挙が批判されている。
性別では女性支持が多いクリントン候補に対してトランプ候補支持は男性である。この調査結果はトランプ候補の支持が増えて両者の拮抗からトランプ候補優勢に転じたことを示している。しかし一体どちらの候補が勝つのかという問いには、10ポイントの差でクリントン候補が有利となると答える有権者が多い。この矛盾は米国の抱える政治不信、大統領選挙の公平性へ不信を如実に表現している。
選挙の公平性への危惧
今回の調査結果ではトランプ候補支持率の優勢が明らかになったがその一方で、有権者は選挙結果がメデイアの予測するクリントン候補に落ち着くと考えている。このことは有権者が選挙の公平性について疑惑を持ち、メデイアの描いたシナリオに沿って大統領選が進んでいることを認めた結果ともとれる。拮抗した選挙と黒人とヒスパニック層を操る選挙に公平性は期待できないからだ。