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バンコクのワット・アルンをはじめ数多くの寺院や美しいリゾート海岸は世界中から多くの観光客を引きつける魅力に溢れている。しかし南国の楽園と思われていたリゾート地フア・ヒンが連続爆弾テロで、死者4名、負傷者数10名を出す悲惨な現場と化した。
爆弾は外国人観光客を狙ったもので最初の爆発はフア・ヒンで起き、タイ人女性1名が死亡、21名が負傷した。2個の爆弾は繁華街のレストランで爆発し、他にも小型の爆発物が外国人で賑わうプーケットのペトングで爆発し市内は混乱に包まれた。24時間で4箇所で爆発が起こりそれぞれ1名づつ、計4名が犠牲となった。その他にも別の2箇所で小規模な爆発や銃撃が起きているとの情報もある。
警察当局は事前に不穏な動きを掴んでいたが、爆発物を仕掛けた実行犯を検挙できなかったことを認めた。各国政府は在タイの自国民に警戒とタイ入国を控えるよう呼びかけている。タイ政府は国際テロを否定し国内の事件であることを強調するが、欧州の一連のISテロとの関連性が疑われている。これまでもタイでの爆弾テロは起きているが、今回は同時多発テロで用意周到に準備した形跡があること、外国人観光客を標的にしたことが特徴でこれまでの単発的な爆弾事件と一線を画する。
特に最近の国民投票で新憲法が成立したが、軍部政権の勢力が温存される憲法案に対する反対派(タクシン元首相派)の反発が強まっていた。またファ・ヒンが王宮の近くであり犯行日が王妃の誕生日であることから、国内混乱によって政府転覆を狙ったとする見方もあるが、外国人を標的としていることや爆弾の製造方法がこれまでと異なる点があるなどから既存の組織と別とも見方もあり犯行組織の実態は不明である。
タイ政府の国内破壊活動説を支持するかのようにメデイアの多くは国際テロとの関連を否定する記事をいち早く発信している。しかしニューヨークタイムスによるとInstitute for Economics and Peaceのまとめた世界テロリズム指数(Global Terrorism Index)によれば、アフガニスタンやパキスタンなどに続いて、タイは8位となっている。2011年に発生した173件のテロ行為で142人の犠牲者を出しているのである。世界からリゾートに訪れる旅行客が絶えないタイであるが、危険な国としてトップ10に入る事実はあまり報道されていない。特に国境近くのイスラム過激派の近年の勢力の増大は注目しなければならない。
タイ首相は爆弾テロの最大の目的はタイを混乱に陥れることだとしてテロ行為を強く非難している。しかしフア・ヒンの爆発で負傷した21名のうち9名は外国人旅行者で、最初の爆発はヒルトン・ホテルの近くで旅行者が多い場所が狙われたことから、外国人旅行者を意識的に標的としたことは間違いない。写真はタイで最も美しいといわれるバンコクのワット・アルン寺院。タイは年間3000万人が訪れる観光客ランキング11位である。テロによって海外からの旅行者は減少すれば政府は不安定化し治安が悪化すれば、悪循環となる。
Source: touropia
フア・ヒンの直後にスーラットでは爆弾は花壇に仕込まれて海上警察署の正面で爆発し市職員が殺害された。爆弾の起爆にはサムソン製の携帯電話が使われ爆弾には殺傷能力の高いボールベアリングが仕込まれていた。タイ当局はあくまで国内破壊行動で国際テロではないとしているが、専門家は南部のイスラム過激派が背後にいるとみている。現政権に不満を持つ分子が政府転覆をはかったのか、欧州の連続テロ後にアジアに波及した国際テロなのかは今後の操作に委ねられることになるが、観光産業への打撃は避けられない。