転換期を迎えたシリア内戦

31.08.2016

Photo: London School of Economics and Political Science

 

 米国防省のピーター・クック報道官は822記者会見で、シリア北部の最大都市アレッポの一部が非公式ではあるが、飛行禁止空域と指定されていること発表した。ロシア、シリア政府軍が上空を飛行すれば、米軍により撃ち落とされると警告、シリア内戦が大き転換を迎えることになる

 

 アレッポ(下地図参照)は8月初めからロシア、シリア政府軍と反対制派勢力との激戦地となり、25万人以上の住民が危機的な状況にあるとされている。今回の飛行禁止空域の指定は、アレッポへの人道支援を可能にする一時停戦のためではなく、米軍が反対制派勢力への支援強化を行うためとしている。

 

 

 

 シリアで米国が支援してきた反対制派勢力の一つ「ヌスラ戦線」はアサド政府軍と戦ってきた。ロシアとシリア軍による空爆を受けたことで弱体化、米国は反体制派つぶしにかかっているとしてロシアを批判した。その後、名称を「シリア征服戦線」へと変更、アルカイダ、IS他の過激派戦闘員が加わり、勢力拡大をはかっている。

 

 記者が飛行禁止空域について、「シリアでアルカイダ、ヌスラ戦線、イスラム国などの勢力を空爆するロシアやシリアの戦闘機を撃ち落とすことになるのでは?」とクック報道官に質問したところ、「米国は連合勢力を守るために必要であれば、軍用機を派遣する」と答えた。

 

 

 「シリア政府軍は自国の上空を飛行する権利があるのでは?」の問いに対し、「我々と連合、協調関係にある勢力を守るために必要であれば、我々の空軍力を行使する」と述べている。

 

 シリア政府軍によるアレッポ制覇がほぼ確実と言われているなか、今回の国防省の動きは、反対制派勢力の立て直しをはかる支援を実施するものと考えられる。米国の対シリア政策、アサド政権の転覆に不可欠な反対制派勢力を守るために、ロシアとの対立も辞さない政策である。