地熱発電・波力発電の将来性

12.10.2016

Image: Marine Energy Research

 

再生可能エネルギーの中で中心とされてきた太陽光も風力もそれぞれ固有の問題(注1)を抱え、普及が進まない。またバイオ燃料もCO2排出量の優位性が否定され化石燃料の代替燃料としての地位を失いつつある。一方で地熱や波力発電はクリーンで安定な自然エネルギーとして注目されている。

 

(注1)太陽光発電の弱点は発電量の変動と設備投資。政策支援なしには普及が困難。風力発電は安定性と環境問題がある。

 

 

地熱発電

地熱発電は地熱で水蒸気を発生させ蒸気タービンを回して発電する。年間・昼夜を通して安定な発電が出来るほか、環境汚染の少ない再生可能エネルギーと言える。ただし最近では水蒸気に変わり水より沸点の低い液体(アンモニア、ペンタンなど)を使ってその蒸気でタービンを回すバイナリーサイクル方式を組み合わせてエネルギー変換効率を上げる工夫が施されている。

 

Source: Geothermal Energy Association

 

地熱発電は火山の多いアイスランドでは国内の電力供給量の26%以上を担っている。水蒸気タービンで発電した後の余剰熱は熱水をパイプラインで大都市に供給することで、エネルギー効率の高い自然ネルギー利用で先端を行く。アイスランドの地熱発電所は50-300MWと原発に匹敵するベース電源として確固たる地位を築いている。

 

 

波力発電 

波力発電は海面の上下動を利用して発電器を回転させる。その方式には幾つかあるが一般的なのは振動水柱型空気タービン方式と呼ばれるもので、細長い円筒を半分水没させその中の海面の上下を上部の空気タービンを回転させる原理である。

 

 

Image: Mendo Coast Current

 

上の模式図のように波の進行方向に置かれた円筒のシャクトリムシのような上下動によって圧縮空間と膨張空間の圧力差でウエルズタービン(注1)を回転させる。無限に繰り返される波の動きでエネルギーに変換される。海洋汚染もない。

 

(注1)ウエルズタービン(下図)はタービンに流れ込む流体の方向が変化しても一定方向に回転する。波の方向が寄せ波でも引き波でも一定の回転方向で発電器を回転させることができる。

 

 

Source: ResearchGate

 

効率が悪そうだが実は地球に降り注ぐ太陽エネルギー(光子)に比べて、単位面積当たりの波の運動エネルギーは20-30倍にもなる。そこでエネルギー変換効率が1桁悪くても、同じ設置面積で比べて数倍のエネルギーを作り出せる。

 

最近、中国の開発した波力発電システムがスコットランドのものに酷似していることから情報を盗み出した可能性が話題になっているが、ウエルズタービンを波の進行方向に平行に設置する原理で設計すれば同じようなデザインに到達するのは不思議ではない。

 

 

地熱発電と波力発電に共通するメリットは(前者は国を選ぶが)潜在的なポテンシャルの大きさ、環境対応型であること、そして装置が単純で維持が容易である点にある。安全性とバックエンド問題で原子力への期待は一気に低下した今、地球上に有り余る自然エネルギーの転換が加速しつつある。

 

太陽光や風力発電も洋上設置が増えているが、波力発電はそれらと共存させることもできる。今後は複数の再生可能エネルギーを組み合わせることと規模を大きくして拠点化することが重要なエネルギー施策となるが、4方を海に囲まれ火山の多い日本は地熱と波力発電に恵まれている。将来の廃炉と放射性廃棄物の処理・保管にかかるコストと安全性を考えれば、自然エネルギーの有効活用を真剣に考えるべき時がきた。