Photo: killer asteroid

 

6500万年前の隕石衝突で恐竜を含む地球上の生命の75%が絶滅したといわれる。しかし隕石の衝突で何が起き、どのようにして生物が死滅したのだろうか。原爆10億個分といわれるエネルギーを持つ隕石が高速で衝突して生じた衝撃波が植物や生物をなぎ倒し生命が一瞬で絶たれたのだろうか、それともそれによって起きた気候の変化で徐々に絶滅の道を歩んだのだろうか。

 

研究者たちはメキシコ湾の隕石衝突地点(チクシュルーブル・クレーター)の岩石を集め、衝突時の様子を再現しようとしている。1980年代から衝突地点である半径160kmに及ぶクレーターの存在が知られており、衝突による津波がメキシコ湾岸に与えた影響が調べられてきた。

 

衝突から10時間で衝撃波と津波は沿岸部に壊滅的な打撃を与えた。隕石衝突の様子は当時の岩石に刻まれており、その層を調べることで詳細な衝突時の様子が明らかになってきた。隕石衝突の衝撃で地震や地滑りが広範囲で起きた。しかし衝撃波による影響は局所的なもので、地球全体に影響を与えたのはその後の急激な気温変化であった。

 

隕石は細かい岩石の粒子を空高く吹き上げやがて微粒子が地球全体を覆う。これらの粒子全体は衝突時の運動エネルギーを大気に熱エネルギーとして放出したが、その規模は1メガトン水爆の2千万個分にあたり、例えれば地球上に6kmごとに爆発させたエネルギーに相当するという。衝突の様子は以下の図に示されている。

 

 

Source: es.ucsc.edhttp://es.ucsc.edu/~ward/movies_impact_index.htm

 

大気は衝突から40分後に高温になり数時間続いた。この高温の大気で生命の大半が数時間で死滅したと考えられている。その後微粒子は太陽光線を遮ったため今度は急激に気温が低下することになった。太陽光を生命維持に必要としない生命体だけが生き残った。18千万年かけて進化してきた生物は巨大隕石の衝突による気温の急激な変動で種の75%が死滅した。

 

地球上に残るクレーターから衝突した隕石の頻度は下に示すように少ないものではない。この図から世界最大のクレーター(フレデフォート・ドーム)はユカタン半島のものではなく南アフリカのヨハネスバーグ近くにある直径190kmのもので、約20億年前に衝突し1メガトン水爆の87千倍に相当する運動エネルギーで地下25kmに達しマントルを溶融したとされている。

 

 

 

Source: Geographical Survey USA

 

生命が誕生してからに限ればユカタン半島の隕石衝突が最大であったが、巨大隕石落下の頻度は大雑把に1億年に1個といわれるが、小隕石落下の確率ははるかに大きい。20161月にNASAは小惑星衝突を事前に発見し落下予測を行う専門部署Planetary Defense Coordination OfficePDCO)を設置している。

 

1998年から現在までに発見されている地球近傍の小惑星は1万個を超え、年間1500個が発見されている。