Photo: Jim Young
米国で生まれ世界の農業に影響を与えた遺伝子組み換え作物(GMO)は一斉を風靡した感があった。除草剤(ラウンドアップ)と組み合わせることが必須のGMO種子は除草剤に耐性を持ち、害虫から守られるような遺伝子で農業のコストカットによって利益をもたらすはずであった。耐性を持つ害虫に対応するための膨大な研究開発コストが種子の価格を引き上げ、農家にとっては専用の除草剤をセットで押し付けられるため利益を上げられなくなってきた。
このためGMO離れが加速しつある中で、ドイツの製薬化学大手バイエルが2016年9月14日、モンサントを660億ドル(日本円にして約6兆7800億円)で買収すると発表した。このほかにもデユポンとダウケミカルが合併すれば農業部門が独立し、巨大企業が誕生する。大手GMO企業が吸収・合併しなければ生き残れない。GMOビジネスにも限界がみえている。
現在はバイエル傘下のGMO最大手モンサントは10月14日からハーグで「人道的罪」に問われ模擬裁判にかけられている。GMOはそれ自身、(ラウンドアップとの関連で)有害であるばかりでなく、除草剤と種子の一括購入を前提とした狡猾な商法をめぐる政治取引で環境汚染を引き起こした罪に問われている。
バイエルの買収もGMOの落日を反映したものである。GMOの最大の問題点は種子の遺伝子が耐性を持つ除草剤(ラウンドアップ)が発癌性を持つことである。大量に散布するためこの除草剤が拡散し、近隣の土壌を汚染するためラウンドアップを使わない農家までもが土壌汚染の被害を受けることになる。またさらに深刻な問題は種子に害虫耐性を持たせるために、特定生物(害虫)に毒性となる遺伝子操作を加えている点である。この仕込まれた遺伝子が人間に対して毒性を持ったり突然変異で毒性を持つ種に変化するリスクがある。
ラウンドアップ農業は90年代半ばから米国、アルゼンチン、ブラジルを中心に活発化しオーガニック栽培農場を駆逐して世界的にも栽培面積が増加している。GMO表示義務を無効にするTPPなど関税協定や表示義務の立法を阻止する膨大な献金を行い市場を席巻してきたモンサント社だが、GMOが利益にならない農家が増えたこと、研究開発に要する資金が不足してきたことなど、落日の色は隠せない。
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