アルツハイマー型認知症の新薬

05.11.2016

Photo: braindiet

 

これまでの研究から認知症の原因はアミロイドベータという蛋白が蓄積し脳細胞を破壊するメカニズムとされている。高齢者の増加とともに人口に占める認知症患者数は6人に1人となり、社会問題化している。

 

このところアルツハイマー型認知症の政府対策の支援を受けて新薬研究開発が活発化している。このほどアミロイドベータの生成を抑制する新薬が認可され、錠剤の服用ですむ一般的な治療法として、認知症患者の低減に寄与すると期待されている。

 

新薬はアルツハイマー型認知症患者の特徴であるアミロイドベータを直接標的として作用するため、効果が大きくようやく認知症治療への道が開けそうだ。試験的な投与は主に安全性(副作用)の確認のためのものだったが、結果は良好で原因物質アミロイド蛋白の生成を止める機能が立証された。

 

同時に脳機能の低下を抑える効果もあるメルク社が製造する新薬(錠剤)は過去10年で初めての本格的な治療法とされる。メルク社によれば現時点でアルツハイマー型認知症に決め手となる治療法がない。新薬は錠剤で誰でも手に入れられるため画期的な治療が開けるとしている(Science Translational Medicine 2016 8, 363, 02 November)。

 

その効果は下イメージに示すようにアルツハイマー型認知症患者の脳では神経細胞(下のイメージ)の信号伝達経路の中断される。神経細胞の末端はアミロイドベータ・ペプチドが集まり塊(白い部分)となって接合を阻害される。これに対して新薬(BACE1インヒビター)はアミロイドの塊になることを防ぐメカニズムで脳機能障害(認知症)を抑え込む。

 

 

Image: medicalnewstoday

 

 

新薬は神経伝達経路を阻害するアミロイドベータ蛋白の生成を抑えることで、記憶喪失や認識機能の低下を防ぐ。市販時期は未定であるが進行中の臨床実験の結果で決まるとみられる。メルク社は現在2500人の患者に対して臨床試験を実施中で、さらに1500人への投与試験を予定している。なおBiogen社も同様の効果を持つ新薬開発の開発に成功しており、両者の新薬によってアルツハイマー型認知症治療が本格化するとみられている。