Image: Passwaters/Rice University
地球上の生命の起源にはもともと地球には存在しなかった炭素原子が大量に生成されることが必要条件である。その炭素原子の生成の起源が44億年前の火星に似た「原始惑星」との衝突にあることがライス大学の研究グループの研究によって明らかになった。
生命体には炭素が蛋白、核酸など炭素が含まれている。45億年前に地球が誕生した時には炭素が存在していたとしても、蒸発したりコア内部に取り込まれることで地表にはほとんど残らない。地球の深部に存在する炭素(Deep Carbon)の起源は原始地球の解明に重要な手がかりとなるとして話題になっている。
そのため地球上に大量に存在する炭素の起源が謎であったが、2013年に研究グループは炭素原子が多い他の天体との衝突によってもたらされたとすれば説明がつくとする学説を提唱した。炭素、硫黄、窒素など蒸発しやすい元素は地球(太陽系)が形成されて1億年以上の時間がたち、表面が冷却されてから持ち込まれた可能性が高い。
Credit: A. Borst
この説の問題点は地球上に大量に存在する軽元素の起源を説明できるが、地球表面には軽元素を含む隕石が発見されていない事実である。研究グループは地殻の内側での反応を調べ、炭素原子が「原始惑星」起源であるとした(Nature Geoscience 05 Sep. 2016)。
論文によると、炭素原子は硫黄との共存すること(還元条件)でコアから析出することを見出した。地球のシリケート層の炭素と硫黄の元素比は原始地球に衝突した火星に似た(注1)「原始惑星」の衝突によってもたらされたと考えられる。
(注1)大気の95%がCO2である火星が炭素に富んでいることは、火星に生命が存在する可能性が高いとされる根拠の一つとなっている。
この衝突で天体のコアは地球のコアと一緒になり炭素が析出して地殻に取り込まれたと考えられる。地球が酸素を形成する25億年前も45億年前に形成された炭素に比べれば歴史が浅いということになる。