Photo: healtheducationarticles
大気中の温室効果ガスの濃度は増加傾向にあるがその増大する速度に減速の兆候がみられるという説が登場した。もちろん地球温暖化説の根幹をなす温室効果ガスの増大に減速の傾向が確認されれば、太陽活動の低下に伴うミニ氷河期の寒冷化とともに、地球温暖化説にとっては大打撃となる。
バークレー国立研究所の新しい研究結果によれば人間活動によるCO2放出量が減るはずはなく、植物が吸収する量が増えたことにより、増大傾向に減速の兆候がみえるとしている。これは増大したCO2が生命の環境適合機能を起動し光合成量が増えたためとしている。
これまでも下に示すようにCO2の変化はハワイのマウナロア観測所のデータにはみられない短周期の増減がみられ、その周期内の変動はあてにならない。長期的な平均は増大傾向に変化はないとしているが、観測データの蓄積が少ないことや地球モデルの精度の限界で、予測の精度は高くない。
Credit: The Keeling Corve
一方でオーストラリアの研究チームはこれまでにCO2の増加傾向に減速がみられると考えていた。新しい研究では2002年から2014年までの期間の短期的変動を取り除いた平均はほぼ一定で変化が非常に少ないとしている。
Credit: JoNova
光合成は太陽エネルギーで水分解と大気中のCO2の還元反応をサイクリックに行って酸素と糖鎖を得る。前者は人間の呼吸で使われる酸素を補填し、後者は人間の食料となる。この光合成の能力はエネルギー変換効率は低いが、CO2取り込みでカーボンサイクルの一翼を担っている。空気中のCO2濃度が上昇する環境変化を植物は敏感に感じ取って、増殖して光合成量を増大させCO2量上昇を抑える方向に働く。
マウナロア観測所のデータによるとCO2濃度は1959年の0.75ppm/年の増加率から2002年には1.86ppm/年と増大の傾向を取り続けてきた。2002年以降の増加速度が減速したとすると、人間活動によるCO2放出が過去最高となった事実に矛盾するようにみえるが、研究グループはCO2が植物以外、例えば海洋に蓄えられたことによるとみている。衛星データと地球モデルによるシミュレーションによれば大部分が植物に取り込まれたことを示している。
人間活動によるCO2増大に逆行する植物の取り込みで20%減少となった。地球温暖化説は太陽活動の低下と温室効果ガスの濃度増大の減速というふたつの事実に向き合わなければならなくなった。もちろん異論を唱える科学者もいるが、少なくとも単純なモデルでは予測できない事実を突きつけたといえる。