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いよいよ国内エアラインもバイオジェット燃料(注1)の利用に踏み切る。バイオ燃料はこれまで倍増するエネルギー需要によるエネルギー危機を救う環境に優しい化石燃料の代替として、注目されてきた。北米とブラジルではバイオエネルギーの占める割合は際立って高い。
(注1)バイオ燃料は主にバイオエタノール、バイオデイーゼル燃料、バイオジェット燃料の3種で、コーンなどの食料となる植物から抽出される。
もともとバイオ燃料で貴重な食物を無駄にしているという批判があり、環境保護の立場からの反対意見も多かったが、ここにきて反対勢力が強くなりバッシングにさらされつつあるのが現状だ。オバマ政権は最近、水と大気中のCO2を原料として太陽エネルギーにより、酸素と人工燃料をつくりだす人工光合成の研究開発に75万ドルを投入することを発表したが、その理由としてバイオ燃料でやがて枯渇する化石燃料の代替にはなり得ないとしている。
Source: biofuel
バイオ燃料への風向きが変わってきたのは何故か。それは環境に優しいとされてきた定説が覆りそうだからである。ミシガン大学のエネルギー研究所はバイオ燃料で化石燃料を置き換えた場合を想定して、環境への影響を調べた。これまでバイオ燃料は交通機関の燃料に使われる割合が増大の傾向にあった。その根拠はバイオ燃料はCO2排出量が植物によって回収されバランスされるので実質的な排出量は相殺されるというものであった。
ミシガン大学の研究グループは2005年から2013年までのフイールドデータを使って燃料消費に加えて燃料抽出プロセスも含めた全過程のCO2収支を調べた。その結果、これまでの研究と異なり大気中の炭素(CO2)量が光合成の炭素取り込み量とバイオ燃料の燃焼や腐敗を含めて植物が排出する炭素の両方に依存するという「カーボンサイクル」(下の図)を考える必要があるという結果が得られた。
Source: athenas.ksu.edu
結局、植物の光合成で大気から取り込まれるCO2はバイオ燃料の燃焼による大気への放出量の37%にしかならない。つまりバイオ燃料がカーボンニュートラル(CO2増大につながらない)という大前提が崩れた。
さらに植物が太陽エネルギーを変換して炭素鎖に貯蔵する効率は1%にも満たず、20-30%という太陽光パネルや最近22%に達した人工光合成に比べてはるかに非効率的なのである。このようなバイオ燃料へのネガテイブな研究結果は植物を取り巻く環境を全て取り込んだ結果で、過去の研究がバイオ燃料に都合の良いように仕組まれたものであった可能性もある。CO2排出量規制についても地球モデルの精度を高めて収支の全体像をみないと思わぬ失敗をするだろう。
バイオ燃料を増やして化石燃料を置き換えることは、まずエネルギー変換効率としては非常に低く、CO2の増大を招くばかりで食料の減産につながる。こうしたデメリットを議論せずにブームとなった。今後の展開については慎重に検討すべき時がきたということを認識しなければならないだろう。